第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P01

2016年5月27日(金) 11:50 〜 12:50 第10会場 (産業振興センター 2階 セミナールームB)

[P-NV-01-1] 歩行練習アシストを用いた歩行練習を実施した片麻痺患者の歩行能力と身体機能の変化

伊藤正典, 小口和代, 星野高志, 池内健, 山口裕一 (刈谷豊田総合病院リハビリテーション科)

キーワード:ロボット, 脳卒中, 歩行

【目的】

歩行練習アシスト(Gait Exercise Assist Robot,GEAR)は,片麻痺患者の歩行練習支援を目的とし,主に膝伸展と遊脚期の振り出しで精緻なアシストが可能である。そのため療法士の介助技術に左右されず,一定の補助量かつ適切な難易度での多数歩のトレッドミル歩行練習を行える。

今回,GEARを用いた歩行練習(GEAR練習)を実施した片麻痺患者の歩行と身体機能の変化について報告する。

【方法】

対象は2014年4月から2015年10月までに当院回復期リハビリテーション病棟に入院し,GEAR練習を実施した脳卒中患者10名(男性8名,女性2名,年齢:中央値59歳(範囲14~75))。適応基準は意識レベルJapan Coma ScaleI桁,初発脳卒中,重篤な合併症のない患者とし,実施時間は着脱を含め40分(通常の理学療法実施時間内)とした。終了基準は平地歩行FIM5点を目安とした。発症からGEAR練習開始(開始時)までの期間は中央値で46日(28~241),実施日数は22日(14~32)であった。評価項目は,歩行関連では平地歩行FIM・速度,GEAR練習の速度・距離,身体機能ではSIAS下肢運動機能の合計点(SIAS-m),体幹機能の合計点(SIAS-t),FIMに準じた立位介助量(立位FIM)とし,開始時・終了時に評価した。速度は平均値,SIAS-m・SIAS-t・立位FIMは中央値で示した。

【結果】

歩行に関して,開始時/終了時の順に平地歩行FIM(点)は4(1~5)/5(2~5)で,8名が平地歩行FIM5点に到達した。平地速度(km/h)は0.3±0.2/0.8±0.6(開始時と終了時で歩行条件が大きく変更した1例を除く),GEAR練習速度(km/h)が0.6±0.2/1.3±0.3,GEAR練習距離(m)が67±26/400±138であった。身体機能に関して,立位FIM(点)は5(2~5)/5(4~5)であった。SIAS-m(点)は3(0~5)/3(0~8)で6名が改善し,SIAS-t(点)は5(0~5)/6(0~6)で6名が改善した。

歩行と身体機能の関係では,SIAS-mが改善した6名は平地歩行速度が大きく向上した。一方,SIAS-mが改善しなかった4名についても,平地歩行FIM,速度は改善傾向であった。歩行と体幹機能の関係について,歩行FIM5点に到達した症例は,開始時のSIAS-t 4・5点かつ立位FIM4・5点であった。

【結論】

GEAR練習開始時に比べ終了時では,GEAR練習速度は2倍,距離は6倍に向上した。それに伴い,平地歩行ではFIMが改善し,速度も2倍に向上した。運動麻痺の変化に関わらず,GEAR練習が平地歩行にも汎化し,改善効果が得られた。

また,片麻痺患者では体幹機能が立位バランス・歩行に影響を与えると報告されている(Verheyden, 2006)。開始時のSIAS-tと立位FIM4点以上の症例は歩行FIM5点に到達し,体幹機能が歩行自立度に大きく影響をしていた。一方,開始時・終了時ともにSIAS-t 0点であった重症例では歩行FIM5点に至らなかったが,立位FIMは2点から4点に改善がみられ,GEAR練習による立位姿勢への改善効果も示唆された。本研究は症例数が少なく,限定的な結果であり,更なる検討が必要である。