第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P01

2016年5月27日(金) 11:50 〜 12:50 第10会場 (産業振興センター 2階 セミナールームB)

[P-NV-01-5] 回復期脳卒中片麻痺者に対する装着型ロボットスーツによる歩行能力改善効果

吉川憲一1,2, 水上昌文2,3, 佐野歩1, 古関一則1, 佐野久美子1, 浅川育世3, 永田博司4, 河野豊4, 大瀬寛高4 (1.茨城県立医療大学付属病院理学療法科, 2.茨城県立医療大学大学院保健医療科学研究科, 3.茨城県立医療大学理学療法学科, 4.茨城県立医療大学付属病院診療部)

キーワード:ロボット, 歩行練習, 脳卒中

【はじめに,目的】

Hybrid Assistive Limb(HAL)は装着型の歩行アシストロボットである。回復期脳卒中患者に対するHALを用いた歩行練習の歩行能力改善効果のエビデンスは未確立である。しかし,回復期患者の直接的な介入効果の検証は自然回復や通常リハの効果との判別が困難である。本研究の目的はHALを用いた歩行練習(HT)を,歩行能力の改善率がほぼ一定となった脳卒中片麻痺者に実施し,HTの歩行能力改善効果を明らかにする事ととした。

【方法】

対象者の適用基準は脳出血又は脳梗塞の初回発症,介助歩行可能の者等とし,除外基準は重度の高次脳機能障害,意識障害等とした。基準を満たした者は介入開始時点決定の為に入院時から毎週10m最大歩行速度(MWS)を計測し,前週と前々週を含む3週分の移動平均値を当該週の値として平滑化し,前週の値に対する改善率を観察した。改善率が,連続する3週間で10%未満,5%未満,5%未満となってから介入を開始した。2013年10月から2014年5月迄の入院者は介入群に,2014年6月以降の入院者は対照群に割り付け,8例が介入群,8例が対照群となった。HTは1回の練習時間を20分(装着と休憩は除く),週5回,5週間実施し,通常の理学療法を40分間とし,対照群の理学療法時間と同一となるよう調整した。HT中は良好な歩容を維持できる範囲の最大速度で実施し,免荷機能付歩行器を転倒防止目的で使用した。練習毎にHALのアシストを最適に調整した。疲労や理学療法中止基準による所見等を認めた場合は終了とした。評価項目は10m最大及び快適歩行テスト(最大速度:MWS,快適速度:SWS,各々の歩行率と歩幅(SL)),2分間歩行テスト(2MT),歩行自立度(FAC),Fugl-Meyer下肢スコア(FMA),Berg Balance Scale(BBS),歩行対称性(AR)とした。各評価は介入開始時点及び5週後の終了時点に行った。ARはSWS測定中の3歩行周期分を解析(Frame DIAS-Vを使用)し,AR=(非麻痺側の単脚支持時間)/(麻痺側の単脚支持時間)にて求めた。対象者の性別と麻痺側はFisher's exact testを,年齢,発症から介入開始の日数,介入期間についてはunpaired t testを用いて両群の差を確認した。評価項目の解析には開始時点から介入終了後の変化量に対する,群と開始時点の値をモデルに含めた共分散分析を用いた(SPSS ver 22.0,有意水準5%未満)。

【結果】

対象者の背景項目で群間に有意な相違がないことを確認した。MWSの調整後変化量の群間差はdiff=9.24,P=0.040であり介入群の変化量が有意に大きかった。以下同様にSWSはdiff=7.34,P=0.014と介入群の変化量が有意に大きかった。ARはdiff=-0.28,P=0.057と介入群に改善の傾向を認めた。SL(MWS計測時)はdiff=0.06,P=0.008であり,SL(SWS計測時)はdiff=0.05,P=0.037と双方のSLで介入群の変化量が有意に大きかった。

【結論】

歩行速度の改善が一定となった回復期後期の脳卒中患者に対するHTによってAR改善やSL増大といった歩行パターンの改善を伴う歩行速度改善を認め,HTの歩行能力改善効果を確認した。