第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P02

Fri. May 27, 2016 11:50 AM - 12:50 PM 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-NV-02-1] 非外傷性脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血の発症から一ヶ月経過時点の歩行自立可否の予測

発症時所見と経過所見による二種類の予測モデルの作成

船越剛司, 小野明弘, 福田真也, 馬井孝徳, 原田真二, 浦谷明宏 (倉敷中央病院リハビリテーション部)

Keywords:くも膜下出血, 歩行, 予後

【はじめに,目的】

くも膜下出血(以下SAH)の予後予測法は知見が乏しく,特徴的な病態や全身状態の管理,治療管理下の患者能力,合併症や臥床の影響を考慮した報告はないため,目標設定は経験則に依存している。よって,今回,これらの入院時と経過所見を用い,SAH症例の発症から一ヶ月経過時点の歩行自立可否を予測する指標の作成を試みた。

【方法】

研究デザインは後ろ向き観察研究とした。対象は,2008年7月~2014年12月にリハを施行した連続358例のうち,選定・除外基準を満たす155例とした。評価項目は,当院データベースかつ診療録より得られる項目を解析した。発症時所見は,年齢,入院前modified rankin scale,脳卒中・認知症・高血圧既往有無,世界脳神経外科連合の分類,動脈瘤部位,Stress index(以下SI),血糖値,Na,Alb,Hb,術式,ドレナージ種類,髄注有無,血腫溶解療法有無,術直後の機能的自立度評価法(以下FIM)運動項目合計点,FIM認知項目合計点(以下c-FIM)とした。経過所見は,発症からVD・SD抜去までの日数,手術操作による脳梗塞発症有無,再破裂・水頭症・脳血管攣縮・脳血管攣縮による脳梗塞・心不全・呼吸感染症・尿路感染症・髄膜炎・褥瘡・深部静脈血栓症・せん妄の有無,端座位開始・起立開始・歩行開始までの日数,50m歩行が指尖介助で可能になるまでの日数(以下,歩行獲得までの日数)とした。一ヶ月経過時点の歩行能力の評価は,FIM歩行項目の点数(以下,歩行FIM)を使用した。統計学的解析は,SPSS Statistics 22を用い,有意水準は5%未満とした。まず,歩行FIM6以上を自立群,FIM5以下を非自立群とし,入院時と経過所見のそれぞれで評価項目の二群間比較を行った。名義尺度はχ2独立性の検定,順序・比率尺度はMann-Whitneyの検定を使用した。そして,二群間比較で有意差が得られたものを独立変数,一ヶ月経過時点の歩行自立可否を従属変数とし,入院時所見のみを用いて一ヶ月経過時点の歩行自立可否を予測するモデル(以下,入院時所見予測モデル)と,これに経過所見を加えた予測モデル(以下,経過所見投入予測モデル)の二種類をClassification and Regression Tree(以下CRT)で作成し,交差検証を行った。なお,CRTに投入する変数は,尺度が統一できたもの同士で相関行列を作成し,多重共線性に配慮した。

【結果】

発症時所見予測モデルでは,リハ開始時c-FIMとSIが一ヶ月経過時点の歩行自立可否の予測変数として採択され,一致率80.6%,検査前確率62.6%,感度76.3%,特異度87.9%,陽性的中率91.4%,陰性的中率68.9%,陽性尤度比6.3,陰性尤度比0.3,交差検証74.2%となった。経過所見投入予測モデルでは,リハ開始時c-FIMと歩行獲得までの日数が予測変数として採択され,一致率85.2%,検査前確率62.6%,感度92.8%,特異度72.4%,陽性的中率84.9%,陰性的中率85.7%,陽性尤度比3.4,陰性尤度比0.1,交差検証79.4%となった。

【結論】

入院時,経過所見投入モデル伴に,SAH発症早期から具体的な目標設定ができる良好な指標であることが示唆された。