第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P03

Fri. May 27, 2016 11:50 AM - 12:50 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-03-3] 車椅子駆動を獲得したC5/C4の駆動分析

~頭頸部・体幹・肩甲骨に着目して~

天野裕子 (神奈川リハビリテーション病院)

Keywords:頸髄損傷, 車椅子駆動, 動作解析

【はじめに,目的】

頸髄損傷者は残存レベルによりADLの自立度が異なる。車椅子駆動が自立する上限レベルは三角筋前部と上腕二頭筋が残存するC5レベルであり,C4レベルではこれらの筋群が残存せず,駆動が困難とされる。今回,右C5/左C4レベルと一側上肢が駆動困難な状態においても残存機能を巧みに使い,室内車椅子駆動を獲得した症例を経験した。本研究は,駆動が可能になったメカニズム,特にC4レベルの一側上肢と頭頸部および体幹運動を中心に三次元動作解析装置を用いて分析することを目的とした。



【方法】

対象は10代男性,受傷から2年10か月経過したC4/5頸髄損傷(Zancolli右C5B/左C4),AIS=B(神経学的レベル感覚・運動ともに両側C4)であった。ISMGはZeroであった。

計測課題は本人所有の車椅子を使用し,両上肢駆動の定常直進走行(4m,4試行)とした。計測は,三次元動作解析装置(Vicon社製,取り込み周波数60Hz)を使用した。マーカ-は頭部5点,肩峰周囲6点,上肢12点,体幹7点,下肢8点の全38ヵ所,車椅子には10ヵ所貼付した。肩甲骨の拳上下制・外転内転,頭頸部の屈曲伸展,体幹の屈曲伸展の4つの運動を算出し,橈骨茎状突起のマ-カ-を用いて手掌が接地した位置から離れる前までを押し出し相,手掌が離れた位置から次に接地するまでを回復相とした。1駆動周期を100%として正規化を行い,上記4つの運動を静止からの角度変化と距離変化を算出し,平均値を使用した。動画も含め駆動パターンを分析した。



【結果】

1駆動周期の各身体部位の特徴がみられ,体幹角度変化のピ-ク値から4相に分類できた。分類は押し出し相の初期をA相(0~21%),それ以降をB相(22~76%),回復相の初期をC相(77~92%),それ以降をD相(93~100%)とした。A相は頭頸部の屈曲(9°)運動により体幹を屈曲(9°)させ,その動きが肩甲骨に伝わり下制(2.7cm)と外転(8.3°)運動が起きていた。加速度が最も大きい(0.2m/s2)ことから推進力を増加させる相と考えた。B相では体幹が固定され,肩甲骨の外転(7.2°)運動により長く推進力を伝える駆動相と考えた。頭頸部は最大屈曲位(39°)後,伸展(32°)運動することにより次相の体幹伸展運動の準備をしているものと考えた。C相は体幹の伸展(12°)運動と肩甲骨の拳上(2.0cm)内転(12.0°)運動で上肢を後方に振り,素早い頭頸部の屈曲(21°)運動でバランスを保つ姿勢の立て直し相と考えた。D相は体幹の屈曲(6°)運動,肩甲骨の下制(0.5cm)と内転(2.5°)運動によりハンドリムに上肢を接触させ,頭頸部の伸展(3°)運動が次の相に備えた姿勢をとり,駆動を準備する相と考えた。症例は頭頸部の運動により体幹運動を操作し,肩甲帯の運動が発揮しやすいよう協調しながら駆動していると考えた。



【結論】

一側上肢がC4レベルで車椅子駆動を獲得する症例がある。

症例は頭頸部を積極的に使い体幹の運動を引き起こし,肩甲骨外転運動による推進力を補助していた。