[P-NV-06-2] 脳卒中片麻痺患者における歩行速度と体幹運動速度の関連性の検討
Keywords:脳卒中片麻痺, 歩行速度, 体幹運動
【はじめに,目的】
脳卒中片麻痺患者にとって,歩行速度がADL自立度や転倒予測と関連のある指標であることは周知されている。片麻痺患者の歩行速度には,バランス,下肢筋力,高次脳機能障害等が重要であることが示されており,さらに近年,Saundersらによって筋パワーの影響も明らかとされている。筋パワーとは,短時間に発揮できる力の大きさを指し,筋力と運動速度の積で算出される。片麻痺患者において,筋力と歩行速度の関係は明らかにされているが,もう一つの要因である運動速度に着目した研究は我々の知る限り行われていない。
一方,健常・虚弱高齢者や整形外科術後患者においては,体幹を素早く動かす能力を測定したSST(Seated Side Tapping test)と歩行速度に相関があることが示されており,体幹の運動速度と歩行速度の関連性が明らかとなっている。片麻痺患者の歩行速度においても体幹機能の重要性が指摘されており,体幹を素早く動かす能力と歩行速度に関連があることが推測される。
そこで本研究では,片麻痺患者における体幹の運動速度と,歩行速度の関連を明らかにすることを目的とした。
【方法】
当センターで脳血管障害と診断され,障害名に片麻痺を有し,5m歩行が見守りで可能な22名(男性16名,女性6名)を対象とした。測定項目は,5m歩行時間,体幹の運動速度,下肢Brunnstrom-stage Test(以下BRS)の4項目とした。基本情報として,年齢,BMI,罹病日数を収集した。
5m歩行時間は,通常歩行速度とし,8m歩行路の中央5mの歩行に要した時間から算出した。
体幹の運動速度測定にはSSTを使用したが,原法では上肢機能を要し,片麻痺患者に適応でないためmodified SST(以下mSST)に改変し,測定した。mSSTでは上肢機能の影響を除くため,両上肢を組んだ座位を開始姿勢とし,両側上腕中央外側から10cm離した台に,出来るだけ早く左右交互に10回接触するのに要した時間をストップウォッチで測定した。台に接触出来ない場合も,重心移動を確認し,測定した。
統計処理は5m歩行時間,年齢,BMI,罹病日数,mSSTの関連についてPearsonの相関係数を求めた。統計処理にはSPSS ver.21を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
基本属性は年齢67.7±9.9歳,BMI21.7±4.4,罹病日数62.2±40.1日,BRSはIII1例,IV1例,V14例,VI6例であった。測定項目の結果は,5m歩行時間6.4±1.8秒,mSST6.3±0.9秒であった。統計処理の結果,5m歩行時間とmSSTにのみ有意な相関が認められた(r=0.51,p=0.02)。
【結論】
歩行速度は年齢や体格,麻痺の程度との関連は認められず,体幹を素早く動かす能力との間にのみ関連が認められた。この結果により,片麻痺患者においても体幹の運動速度が歩行速度にとって重要な要因の一つであることが示唆された。
脳卒中片麻痺患者にとって,歩行速度がADL自立度や転倒予測と関連のある指標であることは周知されている。片麻痺患者の歩行速度には,バランス,下肢筋力,高次脳機能障害等が重要であることが示されており,さらに近年,Saundersらによって筋パワーの影響も明らかとされている。筋パワーとは,短時間に発揮できる力の大きさを指し,筋力と運動速度の積で算出される。片麻痺患者において,筋力と歩行速度の関係は明らかにされているが,もう一つの要因である運動速度に着目した研究は我々の知る限り行われていない。
一方,健常・虚弱高齢者や整形外科術後患者においては,体幹を素早く動かす能力を測定したSST(Seated Side Tapping test)と歩行速度に相関があることが示されており,体幹の運動速度と歩行速度の関連性が明らかとなっている。片麻痺患者の歩行速度においても体幹機能の重要性が指摘されており,体幹を素早く動かす能力と歩行速度に関連があることが推測される。
そこで本研究では,片麻痺患者における体幹の運動速度と,歩行速度の関連を明らかにすることを目的とした。
【方法】
当センターで脳血管障害と診断され,障害名に片麻痺を有し,5m歩行が見守りで可能な22名(男性16名,女性6名)を対象とした。測定項目は,5m歩行時間,体幹の運動速度,下肢Brunnstrom-stage Test(以下BRS)の4項目とした。基本情報として,年齢,BMI,罹病日数を収集した。
5m歩行時間は,通常歩行速度とし,8m歩行路の中央5mの歩行に要した時間から算出した。
体幹の運動速度測定にはSSTを使用したが,原法では上肢機能を要し,片麻痺患者に適応でないためmodified SST(以下mSST)に改変し,測定した。mSSTでは上肢機能の影響を除くため,両上肢を組んだ座位を開始姿勢とし,両側上腕中央外側から10cm離した台に,出来るだけ早く左右交互に10回接触するのに要した時間をストップウォッチで測定した。台に接触出来ない場合も,重心移動を確認し,測定した。
統計処理は5m歩行時間,年齢,BMI,罹病日数,mSSTの関連についてPearsonの相関係数を求めた。統計処理にはSPSS ver.21を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
基本属性は年齢67.7±9.9歳,BMI21.7±4.4,罹病日数62.2±40.1日,BRSはIII1例,IV1例,V14例,VI6例であった。測定項目の結果は,5m歩行時間6.4±1.8秒,mSST6.3±0.9秒であった。統計処理の結果,5m歩行時間とmSSTにのみ有意な相関が認められた(r=0.51,p=0.02)。
【結論】
歩行速度は年齢や体格,麻痺の程度との関連は認められず,体幹を素早く動かす能力との間にのみ関連が認められた。この結果により,片麻痺患者においても体幹の運動速度が歩行速度にとって重要な要因の一つであることが示唆された。