第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P07

Fri. May 27, 2016 3:20 PM - 4:20 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-07-4] 視床出血症例の入院時CT画像所見と独歩獲得率

小野田翔太, 宮原拓也, 濱野祐樹, 實結樹 (医療法人社団愛友会上尾中央総合病院)

Keywords:視床出血, 独歩獲得率, CT画像

【はじめに,目的】

Chungらは視床出血において栄養血管支配領域で5型に分類し,各々の出血部位の症状・特徴を考察している。視床周辺には内包や放線冠といった重要な神経路があり,出血部位を把握することは予後予測の一助となりうるが,独歩獲得について発症早期のComputed Tomography(以下:CT)画像を用いての報告は少ない。そこで今回,当院における視床出血症例の退院時の独歩獲得率を入院時CT画像を用いて血管支配領域別に検討することを目的とした。

【方法】

対象は2013年4月から2015年6月までに視床出血の診断で入院し退院した57例のうち,脳卒中既往を有する者,入院時modified Rankin Scale:1以上の者,転帰が死亡例の者を除外した38例(男性23例,女性15例,年齢71±11.6歳,左18例,右20例)とした。入院時頭部CT画像にてChungらが報告している分類に従い,視床灰白隆起動脈領域を前型,視床穿通動脈領域を後内側型,視床膝状体動脈領域を後外側型,後脈絡叢動脈領域を背側型,視床全域を占有している全体型として5型に分類した。退院時のFunctional Ambulation Classification(以下:FAC)の0-3を独歩不可,4・5を独歩可とし,各型における独歩獲得率を求め,独歩獲得率,退院時FACの点数,退院時Brunnstrom stage(以下:BRS),退院時Barthel Index(以下:BI),在院日数を各型で比較した。統計学的解析として,Kruskal-Wallis検定を用いた。なお,今回は各評価指標で正規性が認められなかった為,ノンパラメトリック法にて検討し中央値を用いた。前型と全体型は症例数が3名・2名と少ないため解析から除外した。統計処理はR2.8.1を用い,有意水準はいずれもP<0.05とした。

【結果】

画像分類の内訳は,後内側型9名,後外側型18名,背側型6名であった。後内側型の独歩獲得率は55.6%,BRS:I1名・II2名・V4名・VI2名,後外側型の独歩獲得率は61.1%,BRS:II4名・III1名・IV1名・V9名・VI3名,背側型の独歩獲得率は66.7%,BRS:I2名・IV1名・V1名・VI2名であった。すべての評価指標において統計学的な有意差は認められなかった(P>0.05)。退院時FACの中央値は各型4であった。

【結論】

出血部位における独歩獲得率,その他の評価指標で統計学的有意差は認められず,要因としてサンプル数や各評価指標の数値のばらつきが大きかったことが考えられる。また,山本らは急性期病院退院時点の歩行能力は血腫量に比例して低い傾向があったと報告している。本研究では血管支配領域のみでの検討で,血腫量は対象者により様々であった。視床は多くの脳領域と連絡し,内包や放線冠といった神経路とも隣接しているため,血腫量による血腫の進展方向によって障害が多岐に渡ると考える。先行研究も踏まえると,歩行能力の予後を検討する際,出血部位のみならず血腫量を含めた検討が重要であることが示唆された。