第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P09

Fri. May 27, 2016 4:30 PM - 5:30 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-09-1] パーキンソン病患者に対する徒手療法を交えた運動療法が歩行機能,筋力に与える効果

歩行機能と筋力が著名に改善した1症例による検討

千崎将孝 (市立札幌病院)

Keywords:パーキンソン病, 徒手療法, 歩行

【はじめに,目的】

パーキンソン病(以下PD)では疾患特異性の1次性障害,不動等に伴う2次性障害が重なることで体幹を中心に関節可動域制限が生じ,身体運動の妨げとなる。その影響を取り除く事で,効果的に運動療法を進める事が出来ると考えた。今回,徒手療法後に運動療法を実施する事で歩行機能,筋力が著名に改善した症例を経験した。本研究ではPDに対する徒手療法を交えた運動療法の有用性について検討することを目的とした。

【方法】

症例は66才,女性。リハビリーション(以下リハ)を目的に入院したPD患者である。Hoehn&YahrstageはIIIで,ADLは自立であった。リハ初回時に歩行機能(10m歩行)と筋力(徒手筋力計による股関節屈曲,膝関節伸展筋力,ストレングスエルゴ240による等速性収縮下での脚伸展筋力)を徒手療法の前後で測定した。用いた手技は四肢に,関節可動域運動に牽引,関節副運動の誘導+伸長域での振動刺激を用いたストレッチ,体幹には神経筋関節促通法を中心に,他動的な手技のみを実施した。2日目以降は,筋収縮を伴う徒手療法を取り入れ,運動療法も合わせて実施した。毎日,来室時と帰室時に10m歩行と脚伸展筋力を測定し経過を追った。尚,リハ時間は同一時間に固定した。また,入院中に投薬の変更は行われなかった。

【結果】

初回介入時の徒手療法前後の測定結果は,10m歩行:秒数10.8→8.0秒,歩幅17→17歩。筋力(右):股関節屈曲:12.1→13.6kgf,膝伸展:15.6→25.7kgf,脚伸展:44.5→54.6N・mと歩行速度,筋力共に改善した。歩幅の改善は見られなかった。二日目以降は,前日と比較し筋力,歩行機能共に徐々に改善を認めた。8日目に不眠による体調不良のため一度機能低下を認めたが,最終日の12日目が歩行機能,筋力共に最高値であった。最終日の結果は,10m歩行:秒数6.1→5.6秒,歩幅:15→15歩。筋力(右):股関節屈曲:17.9→20.5kgf,膝伸展:23.8→26.5kgf,脚伸展:90.6→91.6kgfであり,初回時よりも著名に改善を認めた。最終評価時は脚伸展筋力と歩行機能において,介入前後のデータにほとんど差が見られなかった。

【結論】

初回時に徒手療法により即時効果を認めた。徒手療法は関節機能障害や軟部組織の柔軟性低下等に起因する歩行機能,筋出力障害に対して有効であると考えられた。2日目以降は,最終可動域で筋収縮を促通する手技を加え,身体を大きく動かす運動療法に繋げた。筋力,歩行機能共に日に日に改善し最終日では最高値を認めた。徒手療法と運動療法を組み合わせる事で,治療効果が高まると考えられた。最終評価では,介入前後での測定値に差が見られ難くなった。この現象は4日頃から生じた。これは,数日の徒手介入により残存機能を活用可能になった事が要因と考える。リハ介入初期は関節機能や柔軟性を整える徒手療法を中心に実施し,徐々に運動療法の比重を多くすることで治療効果が得られやすいと考える。