第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P09

Fri. May 27, 2016 4:30 PM - 5:30 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-09-4] 末梢性顔面神経麻痺の急性期における安静時対称性の評価について

今村純子1, 前野里恵1, 高橋素彦2 (1.横浜市立市民病院リハビリテーション部, 2.横浜市立市民病院リハビリテーション科)

Keywords:末梢性顔面神経麻痺, 急性期, 安静時対称性

【はじめに,目的】末梢性顔面神経麻痺に対するリハビリテーション(以下,リハビリ)の目的の一つは,顔面拘縮の予防である。顔面拘縮は顔面筋の短縮した状態であり,顔面の非対称が特徴とされており,急性期からのリハビリが推奨されているが,その評価方法は確立されていない。触診による筋の硬さや伸張性の評価は臨床的には重要であるが,客観的な評価が困難である。視診として安静時対称性の評価はあるが,柳原法では具体的な評価はなく,Sunnybrook法では眼瞼,鼻唇溝,口角の三つの部位に限定されている。そこで,顔面拘縮の評価には顔面筋の急性期から慢性期への変化を捉えることが必要であると考え,試行的に,顔面の部位の偏位を把握する評価表を作成した。評価する偏位については,過去の症例および文献を参考にし,今回は急性期の偏位の特徴について調べた。


【方法】2015年7-9月に末梢性顔面神経麻痺を発症し,リハビリを開始した急性期・成人10名(男性7名,女性3名,平均年齢49±21歳)を対象とし,リハビリ開始時に担当理学療法士および筆者により評価を行った。評価表には,麻痺側眉毛の下垂,非麻痺側眉毛の挙上,麻痺側上眼瞼の下垂,麻痺側眼裂の狭小・拡大,麻痺側鼻唇溝が欠落または浅い,麻痺側鼻唇溝の内側偏位,人中の偏位,麻痺側口角の下垂,非麻痺側口角の挙上,麻痺側頸部の隆起の10項目を掲載した。上記以外の偏位については,写真にて確認した。


【結果】評価表の偏位が該当した症例数は,麻痺側眉毛の下垂8名,非麻痺側眉毛の挙上3名,麻痺側上眼瞼の下垂8名,麻痺側眼裂の狭小7名・拡大1名,麻痺側鼻唇溝が浅い8名,麻痺側鼻唇溝の内側偏位7名,人中の非麻痺側偏位9名,麻痺側口角の下垂8名,非麻痺側口角の挙上4名,麻痺側頸部の隆起3名であった。上記以外に,非麻痺側口角の外転が5名に認められた。また2症例おいて,他の症例にはない偏位が認められた。


【結論】評価表のすべての偏位において,該当する症例があった。麻痺側の眉毛・上眼瞼・眼裂・鼻唇溝・口角の偏位は症例の7,8割が該当した。また,非麻痺側の眉毛・口角で偏位が認められ,人中の非麻痺側偏位はほとんどの症例で該当した。急性期は顔面筋の弛緩性が特徴とされ,麻痺側の眉毛・上眼瞼・口角の下垂や鼻唇溝の内側偏位などに反映されていると考えられるが,非麻痺側については先行研究においてほとんど言及されていない。今回の結果より,非麻痺側の偏位が顔面の非対称を助長している可能性があり,非麻痺側にも考慮した評価・リハビリの必要性が示唆されたと考える。また,評価表には含まれない偏位も認められた。多くの症例に認められる偏位だけでなく,症例の個別性を見落とさないことが重要であり,さらに症例数を重ねて評価表の有用性を確認し,リハビリへの活用方法を検討する必要がある。