第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P09

Fri. May 27, 2016 4:30 PM - 5:30 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-09-5] 筋ジストロフィーの臨床試験におけるアウトカムメジャー研究

~2)評価者間信頼性の検討~

矢島寛之1, 岩田恭幸1, 竹下絵里2, 立森久照3, 脇田瑞木1, 渡部琢也1, 立石貴之1, 佐藤福志1, 小牧宏文2,4, 小林庸子1, 村田美穂1,5 (1.国立精神・神経医療研究センター病院身体リハビリテーション部身体リハビリテーション科, 2.国立精神・神経医療研究センター病院小児神経科, 3.国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神保健計画研究部, 4.国立精神・神経医療研究センター病院臨床研究推進部, 5.国立精神・神経医療研究センター病院神経内科)

Keywords:筋ジストロフィー, アウトカムメジャー, 評価者間信頼性

【はじめに,目的】

筋ジストロフィーは,筋萎縮と筋力低下が進行する遺伝性疾患で,近年は小児期に発症するデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を対象にエクソンスキップ,リードスルーなどの新しい治療が開発され,その安全性,有効性を検証する臨床試験が行われている。筋ジストロフィーの臨床試験では,目的とする治療の結果を示す手段(アウトカムメジャー)として,理学療法士による運動機能評価が重要である。現状では,6分間歩行が用いられることが多いが,治療効果を反映する鋭敏な指標かは疑問である。そこで我々は,筋ジストロフィーの臨床試験において6分間歩行に代わり信頼性,妥当性の高いアウトカムメジャーを作成する多施設共同研究を計画した。過去の文献のレビューを行い,多施設で実施可能な客観的な指標として,6分間歩行以外に床からの立ち上がり,Timed Up & Goテスト(TUG),10m走行/歩行,2分間歩行,ハンドヘルドダイナモメーターを用いた定量的筋力評価(股関節伸展・屈曲,膝関節伸展・屈曲,足関節背屈・底屈)を選定した。選定した運動機能評価の手技の統一を目的に,各項目の測定手技を明確に定め,実際の臨床試験の経験を踏まえ評価の順序を工夫した評価手順書を作成した。本演題では,研究実施にあたり,作成した評価手順書の方法で評価者間信頼性を検討した内容を発表する。

【方法】

自力で床からの立ち上がりおよび歩行が可能な6歳5ヵ月~11歳9ヵ月のDMD男児15名を対象とした。ショートタイムドテスト(床からの立ち上がり,TUG,10m走行/歩行),定量的筋力評価(股関節伸展・屈曲,膝関節伸展・屈曲,足関節背屈・底屈)を以下の方法で実施した。ショートタイムドテストは,被験者が1回実施し,評価者2名がそれぞれ測定した。定量的筋力評価は,被験者が同一日に時間をあけて2回実施し,評価者2名がそれぞれ1回ずつ測定した。項目ごとに2名の評価者の全測定値を用い,ピアソンの積率相関係数と級内相関係数[ICC(Case 2)]を算出し,評価者間信頼性を検討した。

【結果】

ピアソンの積率相関係数(r)は,床からの立ち上がり0.99,TUG0.99,10m走行/歩行0.99,膝関節伸展0.95・屈曲0.65,股関節伸展0.89・屈曲0.45,足関節背屈0.58・底屈0.93であった。級内相関係数(ICC2,1)は,床からの立ち上がり0.99,TUG0.99,10m走行/歩行0.99,膝関節伸展0.96・屈曲0.81,股関節伸展0.91・屈曲0.54,足関節背屈0.74・底屈0.96であった。

【結論】

股関節屈曲以外の項目は評価者間信頼性が高く,我々が定めた詳細な手順書が評価の標準化の上で重要と考えた。以上を踏まえ,手順書の手技の習得のための評価者研修を実施し,上述の運動機能評価を被験者ごとに日をあけて2回行い,再テスト信頼性,併存的妥当性,臨床的に有意な最小変化量(MCID)を求め,筋ジストロフィーの臨床試験において適切なアウトカムメジャーを探る研究を実施中である。