第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P10

Fri. May 27, 2016 4:30 PM - 5:30 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-10-1] パーキンソン病における運動療法の効果

~腰曲がりを呈した症例の姿勢と歩行の関連性について~

保苅吉秀, 佐藤和命, 菊地佑太, 門田栞, 佐藤衣久, 鋤柄知美, 桑野駿, 大和諭志, 望月正道 (順天堂大学医学部附属順天堂医院)

Keywords:パーキンソン病, 腰曲り, 運動療法

【はじめに,目的】

パーキンソン病は1.静止時振戦,2.筋固縮,3.動作緩慢,4.姿勢反射障害を四大徴候とし,進行とともに身体機能が低下し,日常生活に支障が生じてくる。特に腰曲がり(camptocormia)をはじめとする異常姿勢についてのリハビリテーションは,パーキンソン病治療ガイドライン(2011年)でグレードC1と位置付けられ必ずしもその方針が確立した状態ではない。今回,身体機能を評価するとともに運動療法を施行しその結果を検証した。

【方法】

当院に入院中のパーキンソン病6症例(年齢68±11歳,経過年数9年±6年,男性2名女性4名)で,腰曲りの有無は,脳神経内科医師の診断に基づいたものである。症状の経過は平均年数3±2年であった。運動療法開始時および終了時に関節可動域とUnified Parkinoson's Disease Rating Scale(以下UPDRS)part3の歩行,姿勢,立ち上がり動作の各項目,および合計について比較した。

脊椎のアライメントは,股関節・膝関節の拘縮などの影響を受ける可能性があることから,測定部位は胸腰椎,股関節,膝関節,足関節とした。

運動療法の効果判定は,UPDRS Part3(姿勢・立ち上がり・歩行・姿勢の安定及び合計),関節可動域(胸腰椎・股関節・膝関節・足関節)それぞれにWilcoxon検定を用いて分析し,有意水準は5%未満とした。理学療法介入期間は平均29.5±39.5日(中位数29,30日)であった。

【結果】

UPDRS Part3の合計は,運動療法介入前後で有意(p<0.05)に減少した,姿勢・立ち上がり・歩行・姿勢の安定の各項目でも有意(p<0.05)に減少した。

関節可動域では胸腰椎の後屈と股関節の伸展で理学療法により改善をみとめたが,優位な変化は認められなかった。胸腰椎後屈とUPDRS Part3の合計間に相関は認められなかったが,股関節伸展の改善とUPDRS Part3の合計を比較してみると正の相関(r=0.85)が認められた。

【結論】

UPDRS Part3では,姿勢・立ち上がり・歩行・姿勢の安定の項目ならびに合計でも改善が認められた。特に,立位での姿勢については脊椎の可動性と同時に下肢の各関節の可動域に着目し,それぞれの関係に配慮しながら運動療法を行うことは重要であると考えた。また,関節可動域の拡大や立位での姿勢の改善をセラピストの介助とともに行い,重力下で効率よく姿勢調節することが重要であると考えた。

股関節の伸展角度とUPDRS Part3の合計で正の相関が得られたということは姿勢への影響について体幹の関節可動域のみならず下肢も着目して行くことが重要であると考える。股関節は骨盤を介して腰椎と関連があると言われている。立位姿勢や歩行に関して,これらの影響をさらに調査していくことが有用であると思われる。

今回,結果を得ることが出来た。今後,症例数を重ねることで更なる検証を進めることが課題である。