第51回日本理学療法学術大会

Presentation information

一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P11

Sat. May 28, 2016 10:30 AM - 11:30 AM 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-NV-11-1] 急性期脳卒中患者の転帰先にはSIASと高次脳機能障害の有無が関連する

ロジスティック回帰分析を用いた自宅退院,回復期病院転院に関連する要因の検討

大池遼1, 伊藤正臣1, 依田英樹1, 浅川和仁1, 荻原大輔1, 市川彰2 (1.佐久総合病院佐久医療センター, 2.佐久総合病院)

Keywords:脳卒中, 急性期, 転帰

【はじめに,目的】

急性期病院においては在院日数が短縮しており,その中で理学療法士は患者の身体機能の改善を最大限図るとともにその後の転帰先を提案していくことが重要な役割である。転帰先決定については様々な関連要因が先行文献や臨床経験上からも推測されるが,転帰先決定において優先的に考慮すべき要因が明らかとなり,さらにそれが早期にわかれば転帰先決定をより明確かつ円滑にすすめることができると考える。

そこで本研究では理学療法開始早期に得られる情報から転帰先に関連する要因を検討することを目的とした。

【方法】

対象は平成26年4月1日から平成27年3月31日までに脳梗塞および脳出血を発症し当院へ入院し,リハビリテーションを実施した患者93名(男性62名)とした。なお,死亡例や入院中の発症例,データ欠損のある症例は除外し,転帰先が自宅もしくは回復期病院の患者を選択した。平均年齢は70.2±14.6歳,平均在院日数は23.1±17.0日,脳梗塞62名・脳出血31名,自宅退院55名・回復期病院転院38名であった。

研究デザインは後ろ向き観察研究とし,患者の基本情報に加えて理学療法初回介入から2週目までに評価したStroke Impairment Assessment Set(SIAS),Trunk Control Test(TCT),高次脳機能障害,嚥下障害,失語症の有無と初回介入時modified Rankin ScaleとFunctional Independence Measure(FIM),社会因子として同居家族数といった項目をカルテより情報収集した。統計学的解析は自宅退院群と回復期病院転院群の2群間で各項目を比較,有意差を認めた項目から多重共線性や臨床上有用である点等を考慮して独立変数を選択し転帰先を従属変数としたロジスティック回帰分析(尤度比検定)をおこなった。ロジスティック回帰分析で選択された項目に関してROC曲線を作成し自宅退院に関するカットオフ値を算出した。統計学的解析にはJMP11を使用し有意差は5%未満とした。

【結果】

2群間の各項目の比較ではSIAS,TCT,FIMの各項目および合計点,初回介入時mRS,高次脳機能障害の有無,嚥下障害の有無において有意差を認めた。ロジスティック回帰分析はSIAS合計点,FIM合計点,高次脳機能障害の有無,嚥下障害の有無を独立変数に選択し,SIAS合計点(オッズ比1.06,95%信頼区間1.02-1.10)と高次脳機能障害の有無(オッズ比0.28,95%信頼区間0.08-0.85)が選択された。SIAS合計点に関して自宅退院を陽性としたROC曲線を作成し曲線下面積は0.86,ROC曲線より算出したカットオフ値は62点で感度は86.8%,特異度は77.5%であった。

【結論】

急性期脳卒中患者の転帰先を早期に予測するにあたっては,初回介入から2週目までの時点でSIAS合計点が62点以上であることと高次脳機能障害が無いと評価されれば最終的に自宅退院できる可能性が高く,それらを満たさない場合は回復期病院へ転院し継続的な介入をおこなう必要性があることが示唆された。