第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P11

Sat. May 28, 2016 10:30 AM - 11:30 AM 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-NV-11-3] 視床出血後の麻痺性上斜視に対する代替医療の即時効果

柴田信行 (介護老人保健施設やかた)

Keywords:麻痺性上斜視, 複視, 代替医療

【目的】

「麻痺性斜視」は眼筋を動かす神経の麻痺や筋肉の病気により起こる眼位の異常で治療に抵抗性である。斜視では,両眼視機能(精密な立体感覚や奥行き感)が低下するだけでなく整容的な問題を併せもっておりQOLにも深刻な影を落とす。治療はプリズム眼鏡で矯正し,角度が大きければ手術の適応となるが,術後の戻りや眼位の調整が難しく再手術が前提となるなど課題も多い。手術以外にこれまで有効な治療法が存在しなかった麻痺性上斜視に対し今回,代替医療を行い著効したので報告する。

【症例】

症例は右視床出血(平成23年2月発症)後,麻痺性上斜視を合併した左片麻痺患者(年齢58歳,男性)で著明な複視が残存した状態で平成24年10月9日より筆者の勤務する施設で週1回の理学療法開始となった。

【方法】

平成26年4月15日から平成26年10月21日までの6ヵ月間,週1回の頻度(計18回)で,頭頸部に対する視機能改善療法(以下,当療法)を行った。当療法は,眼球運動,視覚情報機能の向上を目的に理学療法士の吉田が開発した徒手療法である。評価は介入開始時,介入開始後3ヶ月,介入開始後6ヶ月時の視力,視野,眼位,眼球運動の可否,複視の有無,眼の奥の違和感の程度を評価した。なお施術及び評価は全て筆者が行った。

【結果】

<施術前>視力(右0.7,左0.3),視野;150°,眼位;上方偏位+++,眼球運動;正面視・下方視共に不可,右方視・左方視は上方偏位(+)で可能,複視;+++,眼の奥の違和感;強く疲れやすい。

<施術直後>視力(右1.2,左0.5),視野;160°,眼位;上方偏位++~+,眼球運動;正面視・上方視・下方視共に可能,右方視・左方視共に上方偏位なしに可能,複視;+++~+,眼の奥の違和感;軽度。

<施術開始3カ月>視力(右1.2,左0.8),視野;160°,眼位;上方偏位+~-,眼球運動;正面視・上方視・下方視共に可能,右方視・左方視共に偏位なしに可能,複視;++~-,眼の奥の違和感;軽度。

<施術開始6カ月後>視力(右0.9,左0.3),視野;170°,眼位;上方偏位+~-,眼球運動;正面視・上方視・下方視は可能,右方視・左方視が上方偏位なしに可能,複視;+++~-,眼の奥の違和感;軽度。

【考察】

視床出血後症状固定した麻痺性上斜視例に対し6ヶ月間,当療法を施行し即時的効果を認めた。介入開始時より施術後は眼位,眼球運動,視力,複視,眼の奥の違和感において著効し,その効果は3ヶ月後,6ヶ月後と後半になるほど改善が見られた。手術以外に根治的治療法が存在しない麻痺性斜視において,無侵襲で一定の効果が期待できる当療法は非観血的治療の第一選択として言及する価値がある。但し,当療法の斜視に対する施術例が少ないため今後は多数例による検証が必要と思われる。