第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P13

Sat. May 28, 2016 10:30 AM - 11:30 AM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-13-3] 視神経脊髄炎関連疾患による重度対麻痺を呈した症例の機能回復に着目して

新井美咲, 宮田一弘 (日高病院リハビリテーションセンター回復期リハビリ室)

Keywords:視神経脊髄炎, 機能回復, 歩行

【はじめに,目的】

視神経脊髄炎(neuromyelitis optica:NMO)は,視神経炎と脊髄炎を特徴とする中枢神経系の炎症性疾患である。本症例はNMOの特異的診断マーカーの抗アクアポリン4抗体が陰性であったが,3椎体以上の連続する脊髄炎(C6-Th3)や,NMOに特徴的な脳幹病変を有していたことから,NMO関連疾患と診断され治療が行われた。NMOに対する理学療法の報告は少なく,その有用性は明らかでない。今回,NMO関連疾患による重度対麻痺を呈した症例を経験し,麻痺の重症度に応じて介入プランを変更し,車椅子レベルから最終的に杖歩行自立に至ったため報告する。

【方法】

症例は50歳代男性で,平成26年3月に眩暈,嘔吐で入院となり,対麻痺,複視が出現したため,急性期治療が行われた。発症2ヵ月で,当院回復期リハ病棟に転院となり,重度対麻痺,起立性低血圧,膀胱直腸障害を認めた。移乗動作に中等度介助を要しており,重度対麻痺が残存していたため,車椅子自立の目標設定を行った。血圧の安定を目的にTilt tableでの立位練習,端座位練習を実施した。発症3ヵ月で,両下肢の支持性向上を目的に,両膝関節にKnee brace使用し,起立練習を行った。その後,右下肢の麻痺が徐々に回復し,左下肢のみ装具使用し,平行棒内歩行練習を開始した。発症4ヵ月で固定式歩行器歩行自立へ目標の再検討をした。両下肢の膝伸展筋は,麻痺の回復が緩徐であったため,筋力増強運動,歩行練習に加え,電気刺激療法,自転車エルゴメーターを追加した。発症5ヵ月で再度目標を検討し,片ロフストランド杖歩行自立とした。退院に向けた全身持久性と歩行速度向上のため,トレッドミル歩行練習を行った。しかし,退院時に膝伸展筋の筋力低下,歩行時の膝関節ロッキングは残存した。

【結果】

以下に発症後2ヵ月,4ヵ月,6ヵ月の評価結果を記す。

MMT股関節屈曲筋は1/1,2/2,5/2,膝関節伸展筋は1/0,2/2,2/2,足関節背屈筋は2/0,4/3,5/4であった。両膝関節伸展筋は筋力低下が残存し,足関節背屈筋は早期より回復を認めた。BBSでは,5,7,56点とバランス能力の向上を認めた。FIM運動項目は,30,61,73点であり,歩行レベルは,不能,平行棒内歩行見守り,片ロフストランド杖歩行自立であった。

【結論】

本症例は,NMO関連疾患として診断されたが,発症2ヵ月の段階で重度の対麻痺を有していた。NMOでは,急性期治療後に麻痺の改善が乏しい場合は,重度の後遺症を残すことが多いと報告もあるため,車椅子レベルの目標設定を行った。経過の中で,全身状態の安定と活動量の増加に伴い麻痺の回復が認められ,目標の修正を繰り返し,最終的に歩行自立に至った。NMOの病態は様々なため,状態変化に合わせた,個別の筋力増強運動と下肢の運動量を多く行うことで一定効果が得られた。また,回復期病棟での長期的なリハビリテーション介入を実施できたことが症例の最終的な予後に影響を与えたと考える。