第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P13

2016年5月28日(土) 10:30 〜 11:30 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-13-4] パーキンソン病患者に対する入院による短期集中リハビリテーションの効果の検討

繰り返して入院した3症例の報告

平山秀和, 川野義晴, 小林浩介, 工藤弘行, 加世田ゆみ子 (広島市立リハビリテーション病院)

キーワード:パーキンソン病, 入院短期集中リハ, 生活機能維持

【はじめに,目的】

パーキンソン病(以下,PD)には,PDそのものによる一次的な機能障害と,低活動性のために出現する廃用症候群を中心とした二次的な障害がある。厚生労働省老健局の私的諮問機関である「高齢者リハビリテーション研究会」は,高齢者リハビリテーションのモデルを提唱している。この中で慢性神経疾患であるPD患者は,徐々に生活機能が低下する廃用症候群モデルに当てはまる。大川らはこのモデルにおいて,「生活機能の低下が軽度である早い時期にリハを行なうことが基本となり,リハの提供にあたっては,必要な時に,期間を定めて計画的に行なわれることが必要である」としている。しかしPD患者を対象として,短期間入院での集中的なリハビリテーションの提供を,長期間にわたり断続的に行った報告は見当たらない。今回,入院での短期集中リハビリテーションを複数回実施した3症例の経過を報告し,PD患者に対する入院での短期集中リハの効果を検討した。


【方法】

PD患者のうち5回以上の当院入院歴のある症例を対象とした。FIMを入院時と退院時に測定した。


【結果】

5回以上の当院入院歴のあるPD患者は3名であった。症例Aは女性,初回入院時は50歳前半,罹患期間20年,H&Y分類4度。当院入院回数は6回,初回入院から6回目退院までの日数は2125日。このうち短期集中リハ目的の入院は4,5,6回目。入院日数は順に144,30,33,32,22,20。(PT,OT,ST合計)リハビリ実施単位数(1単位=20分)は順に818,209,205,147,98,94。FIM(入院時:退院時)は順に84:99,103:103,102:106,108:110,82:91,84:93であった。症例Bは女性,初回入院時は60歳後半,罹患期間5年,H&Y分類4度。当院入院回数は7回,初回入院から7回目退院までの日数は1056日。このうち短期集中リハ目的の入院は2,3,4,5,7回目。入院日数は順に87,27,30,29,34,90,29。リハビリ実施単位数は順に590,136,143,132,155,764,165。FIMは順に51:65,49:53,62:64,61:76,63:73,19:58,50:68であった。症例Cは男性,初回入院時は70歳後半,罹患期間10年,H&Y分類4度。当院入院回数6回,初回入院から6回目退院までの日数は1475日。このうち短期集中リハ目的の入院は1,2,3,4,6回目。入院日数は順に41,48,41,35,30,29。リハビリ実施単位数は順に173,288,192,149,160,140。FIMは順に55:62,59:70,64:82,65:68,59:64,53:62。


【結論】

PDは進行疾患であり,長期的には徐々に病状が進行していくことが予想される。しかし,今回報告した3症例は,短期集中リハ入院中のFIMはすべて改善していた。入院による短期集中リハでは,運動療法だけでなく,PD治療薬の変更や,栄養面でのサポート等包括的な介入を集中的に行うことができる。PD患者対する断続的な入院による短期集中リハを行うことは運動機能,生活機能の維持にある程度有効であることが示唆された。