第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P13

Sat. May 28, 2016 10:30 AM - 11:30 AM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-13-6] 音楽が二重課題に与える影響

堀川能與, 地家淳史 (京都大学医学部人間健康科学科)

Keywords:二重課題, 音楽, 健常者

【はじめに,目的】

高齢者や中枢神経障害患者において,行為・行動に必要な認知機能が低下するため,二重課題遂行機能は障害されやすく,二重課題を行うと与えられた2つの課題のどちらも十分に遂行できなくなる。二重課題が遂行できない場合,日常生活動作を大いに障害するため,その改善は理学療法の重大な目標になる。

二重課題に対するリハビリテーションとして推奨されている方法に,聴覚刺激の手掛かりを用いて,運動のリズムを外的に制御するという方法がある。歩行などの運動を行う上で,リズムを形成することは重要であるが,二重課題などを行うとリズムの形成が困難になるため,上記のような方法で,外的な刺激によるリズム形成の介助が行われることがある。

しかし,聴覚の刺激がどのようにリズム形成にかかわっているか,効果はどれくらい持続するのか,という点に関しては,ヒトの脳において未だ解明されてはいない。

本研究では,足踏みと上肢課題を同時に行う際,音楽介入で足踏みのリズムがどのように変化するかを確認した。

【方法】

本研究は非盲検によるランダム化比較試験である。対象は若年健常者34名(平均年齢22.2±4.8歳)とした。対象者は椅子座位で踵部にNoraxon社製Telemyo system三次元加速度センサーを貼り付け各試行を実施した。

上肢課題として,対象者が普段使い慣れているスマートフォンで,文章を打ち込む課題を,下肢課題として,提示したリズムでの足踏みをそれぞれ実施した。

下肢課題のみを行う試行(試行1),下肢課題と上肢課題を同時に行う試行(試行2),介入後に下肢課題と上肢課題を行う試行(試行3)の,計3試行をした。介入内容は,予め用意した音楽のリズムに合わせて足踏みをしながら上肢課題を行うことで,対照群は下肢課題と上肢課題を同時に行う試行を再度実施した。なお,リズムの計測は上記の3試行実施時の足踏みにて行い,各ステップ間にかかった時間のCV値を算出し,各群の試行間における変化について検討した。

【結果】

計34名をリクルートし,データの異常値があった3名を除外した31名(介入群14名,対照群17名)のデータを用いた。

CV値について,試行1と,試行2では,両群とも試行2で増大する傾向が見られた。各群のステップ間の時間の平均値±SDは,試行1の介入群は1.0744±0.0464,対照群は1.0567±0.0442,試行2では,介入群は1.0565±0.0760,対照群は1.0581±0.0733であった。

しかし介入前後では,対照群は二つの試行で変化がみられなかったのに対して,介入群では低下する傾向が見られた。介入群は1.0695±0.0704,対照群は1.0635±0.0745であった。

【結論】

音楽介入で二重課題をしている際の,運動のリズム形成が上達するかを調査した。介入群では,介入後の二重課題中の足踏みのCV値が減少した。今後さらに被験者を増大させ,データを収集する必要がある。