第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P14

Sat. May 28, 2016 11:40 AM - 12:40 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-14-5] 慢性期脳梗塞症例に対する4週間の神経筋電気刺激を用いたホームエクササイズによる歩行特性の変化

三次元動作解析装置を用いた検討

久保田雅史1, 安竹千秋1, 神澤朋子2, 山村修2, 渡部雄大1, 今中芙由子1, 嶋田誠一郎1, 辻川哲也3, 岡沢秀彦3, 加藤龍4, 横井浩史5 (1.福井大学医学部附属病院リハビリテーション部, 2.福井大学医学部附属病院神経内科, 3.福井大学医学部附属病院高エネルギー医学研究センター, 4.横浜国立大学大学院工学研究院システムの創生部門, 5.電気通信大学大学院情報理工学研究科知能機械工学専攻)

Keywords:神経筋電気刺激, 脳梗塞, 三次元動作解析

【はじめに,目的】

脳卒中治療ガイドライン2015において,末梢神経や筋に対する電気刺激(Electrical Stimulation:ES)は,上肢機能改善や歩行障害改善を目的に使用を推奨されている。我々は先行研究においてPETを用いてES中の脳活動を評価し,ESと随意収縮(Voluntary contraction:VC)を同期させることにより即時的に感覚野の賦活が増大すること,さらに4週間のESを用いたホームエクササイズにより同一タスクでも脳の賦活範囲が縮小することを示した。一方で,ESとVCを同期させたホームエクササイズが歩行パターンや下肢機能にどういった影響を与えるかは明らかにされていない。そこで本研究の目的は,慢性期脳梗塞症例に対して4週間のESとVCを同期させたホームエクササイズを実施し,三次元動作解析装置を用いて実施前後の歩行パターンを定量的に評価することである。




【方法】

症例は発症3年以上経過した慢性期脳梗塞症例5名である(平均罹患期間7.6±3.7年,男性3名,女性2名,平均年齢61.8±20.1歳)。本研究はクロスオーバーデザインとし,ESを用いたホームエクササイズ4週間とESを用いないホームエクササイズを4週間実施する期間を設定し,その順序はランダムに規定した。ホームエクササイズは座位での麻痺側膝伸展運動とし(20分間2セット/日,5回/週),ESを用いた時期には運動に合わせてESを負荷させるようにした。ESの電極貼り付け位置は大腿四頭筋とし,Carrier周波数2000Hz,Burst周波数を100Hz,Duty比50%の双極矩形波を用いた。ホームエクササイズ開始前(Baseline)及びESあり期間終了後(Post-ES),ESなし期間終了後(Post-nonES)に裸足での自由歩行を評価した。歩行解析は大型床反力計4台と,カメラ10台を同期させた三次元動作解析装置Vicon MXを用いた。評価項目は時間距離因子,運動学的因子,運動力学的因子とした。また,ハンドヘルドダイナモメーターを用いた等尺性膝伸展筋力を評価した。統計はANOVAとpost hoc testとしてBonferroni testを用いた。有意水準は5%とした。




【結果】

歩行速度や歩幅,ケイデンスはPost-ESとPost-nonESともにBaselineと比較して増大傾向であったが有意差はみられなかった。また,Post-ESでは,BaselineやPost-nonESと比較して立脚後期の股関節伸展が増大,歩行周期中に股関節外転角度の減少,立脚期中に膝関節伸展モーメントの増大といった歩行特性を示していた。麻痺側大腿四頭筋筋力はBaseline 136.2±54.0N,Post-ES 189.2±45.2N,Post-nonES 157.8±34.9Nと電気刺激あり期間後に増大傾向であった。




【結論】

本研究の結果より,慢性期脳卒中症例において4週間のホームエクササイズによって時間距離因子,運動学的・運動力学的因子に変化が生じる可能性が示された。特に,ホームエクササイズをVCのみでなく,ESとVCを併用することで麻痺側の立脚期における膝関節安定性向上と股関節運動範囲の拡大を促す可能性がある。