第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P16

Sat. May 28, 2016 4:00 PM - 5:00 PM 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-NV-16-2] 脳卒中発症早期における意識障害がどこまで予後に寄与するか

~入院時,入院翌日,入院1週間後の意識障害に着目して~

石川直人 (医療法人新さっぽろ脳神経外科病院)

Keywords:意識障害, 脳卒中, 年代別

【はじめに】

脳卒中急性期の一般病床では,限られた入院期間の中でできるだけ明確な予後を予測し,次の転帰先の検討をしていかなくてはいけない。しかし,発症早期の評価においては,意識障害の影響で運動機能や高次脳機能,また初期治療に伴うドレーン,ライン類の留置等の影響で日常生活動作能力が的確に捉えにくい場合が多い。今回,脳卒中発症早期における意識の状態が,予後にどこまで寄与するかについての調査を行ったので報告する。

【方法】

本調査ではJapan Coma ScaleII・III桁を意識障害と定義し,対象を2011年6月~2015年6月に脳梗塞または脳出血にて当院に意識障害を有して搬送された患者(死亡または他疾患治療のための転院を除く)とした。また,対象を入院時に意識障害を有した患者(n=163),入院翌日に意識障害が残存した患者(n=115),入院1週間後に意識障害が残存した患者(n=71)それぞれで年代別の退院時点での障害者老人の日常生活自立度(以下自立度,J~C),実用移動手段,食事の経口摂取の可否の割合をまとめた。

【結果】

70歳代では,翌日の意識障害残存で90%が,1週間の残存で100%が屋内生活に介助が必要となる自立度B・Cとなった。

80歳代では,入院時に意識障害があれば97%が,翌日の残存で100%が自立度B・Cとなった。また,1週間の残存で100%がベッド上生活になる自立度Cとなった。実用移動手段は,翌日の意識障害残存で97%が,1週間の残存で100%が車椅子となった。栄養摂取については,1週間の残存で100%が経管栄養となった。

90歳代では,入院時に意識障害があれば100%が自立度B・C,94%が移動手段車椅子,96%が経管栄養となった。翌日の残存で100%が自立度C,1週間の残存で100%が車椅子移動と経管栄養となった。

なお,60歳代以下では,90%以上の高確率となる項目は得られなかった。

【結論】

今回の結果で得られた結論は以下の通りである。

(1)70歳代では,入院翌日の意識障害残存があれば日常生活に介助が必要となる可能性が高い。

(2)80歳代では,入院時に意識障害があれば日常生活に介助が必要となり,入院翌日の意識障害残存で車椅子主体の生活となり,入院から1週間の意識障害残存で食事の経口摂取は困難となる可能性が高い。

(3)90歳代では,入院時に意識障害があれば日常生活に介助が必要となり,移動は車椅子で,食事の経口摂取は困難となる可能性が高い。

(4)60歳代以下では,意識障害の有無のみで大まかな予後を予測することは困難である。

高齢になるにつれて予後不良となる割合が高くなる要因として,肺炎等の合併症が増える,高血圧や糖尿病等の既往疾患が増える,予備身体能力が低下する等の影響と思われる。

脳卒中発症早期の患者の意識の状態のみであっても,大まかな予後を予測することは可能であり,その予測をもとに患者・家族へのインフォームドコンセントや転機先への動機づけの一助になりうると考える。