第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P16

Sat. May 28, 2016 4:00 PM - 5:00 PM 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-NV-16-4] 急性期脳卒中(橋梗塞)後のprogressive motor deficitsの予測因子の検討

平野秀実, 堤裕太郎, 毛利博文, 田中琴海, 足立麻衣 (社会医療法人財団池友会新小文字病院)

Keywords:急性期脳卒中, 運動障害, 予測因子

【はじめに,目的】

急性期脳卒中後の神経症状増悪(NIHSS4点以上の増加)は11.9%の患者にみられ,その因子として内頸動脈閉塞,中大脳動脈閉塞,線条体内包梗塞,橋梗塞,梗塞巣の大きさ15~30mmが関係している報告されている(Miyamoto N, et al., 2013)。脳卒中治療ガイドライン2015でも十分なリスク管理のもとにできるだけ発症後早期から積極的なリハビリテーション(以下,リハ)を行うことが強く勧められている(推奨グレードA)。そのためにはリハ介入時からprogressive motor deficits(以下,PMD)の有無を評価・予測し,実際の介入場面ではリスク管理が必要である。本研究の目的は,当院で急性期脳卒中リハを実施した患者の中で橋梗塞を呈した患者を対象に電子カルテ内から後方視的にPMDに影響を与えた因子について調査し,リハ介入時にPMDの予測因子を明確化することとした。


【方法】

対象は2014年1月1日から2015年2月28日までに当院へ入院し,急性期脳卒中リハを実施した患者375名のうち橋梗塞患者37名(9.8%)を対象とした。調査項目は,PMDの有無,増悪症例の入院から増悪までの日数,入院から離床までの日数,在院日数,脳画像所見で傍正中橋動脈領域(以下,PPA領域)の梗塞巣の有無,年齢,性別,LDL-コレステロール値(≧140 mg/dL),既往歴の有無(糖尿病・高血圧症・高脂血症・腎不全)とした。統計解析はPMD群と非PMD群の2群間の比較を行い,各項目について対応のないt検定及びX2検定を行った。統計ソフトはJSTAT for windowsを用いた。有意水準は5%未満とした。


【結果】

PMD群は9名(24.3%)であった。PMDの有無における2群間の比較では,すべての調査項目で有意な差を認めなかった。増悪症例の入院から増悪までの日数は2.6±1.1日であった。また,離床までの日数はPMD群3.5±4.2日,非PMD群0.6±0.9日(p=0.09)。在院日数は,PMD群21.2±7.6日,非PMD群15.3±8.1日(p=0.07)であった。


【結論】

橋梗塞はBranch atheromatous diseaseを呈しやすく進行性運動障害が起こりやすい部位として知られている(Yamamoto Y, et al., 2011)。本研究では,リハ介入時にこれらの因子からPMDを予測することは困難であるという結果となった。しかし,PMD群の9名中7名の梗塞巣はPPA領域であり梗塞巣の大きさは18.1±4.3mmであった。また,増悪までの日数は2.6±1.1日であり,橋梗塞の場合はPPA領域で梗塞巣の大きさが18.1±4.3mm以上の場合,発症後2~3日間は毎日神経症状増悪がないかを評価しながらリハ介入することが必要であると示唆する結果と考えられる。今回は症例数が37例と少数のため今後も継続して調査することが必要である。