第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P17

2016年5月28日(土) 14:50 〜 15:50 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-17-2] 急性期くも膜下出血患者における転帰と栄養状態の関係

畑賢俊1, 小幡賢吾1, 高橋智子1, 鶴川春佳1, 小野田惠介2,3, 神原啓和2, 西田あゆみ3, 竹内勇人2, 小田智聡2, 西本めぐみ1 (1.岡山赤十字病院リハビリテーション科, 2.岡山赤十字病院脳神経外科, 3.岡山赤十字病院脳血管内治療外科)

キーワード:くも膜下出血, 栄養状態, 転帰予測

【はじめに,目的】

くも膜下出血(以下,SAH)患者において転帰予測は重要である。これまでにSAHの転帰に影響を与える因子を検討した報告は多いが,栄養状態との関連を検討した報告は少ない。本研究では,当院におけるSAH患者の転帰に影響する因子,中でも栄養状態の指標として総リンパ球数(以下,TLC),アルブミン値(以下,Alb),総蛋白値(以下,TP)に注目し,その関連性について検討した。


【方法】

2012年5月から2015年9月に当院に入院し理学療法を施行した,SAH患者46名(男性14名,女性32名,平均年齢62.2±16.3歳)を対象とした。なお外傷性SAH,死亡退院例は除外した。情報はカルテより後方視的に入院時意識レベル,入院時modified Rankin Scale,脳血管攣縮の有無,シャント術の有無,在院日数,Body Mass Index(kg/m2),血液データよりTLC(/μl),Alb(g/dl),TP(g/dl)の最低値を抽出した。また,転帰先は自宅退院群(以下,退院群)と回復期病院転院群(以下,転院群)に分類した。これ以外の転帰はなかった。統計解析は統計ソフトJMP(ver.11.0.0)を用い,各項目の正規性を検証した上で,両群間の比較として対応のないt検定,Wilcoxon検定,χ2検定を用いて単変量解析を実施した。その後自宅群と転院群を従属変数,単変量解析で有意差を認めた項目を独立変数とし,多重ロジスティック回帰分析を実施した。また血液データと各項目の相関も検討した。いずれも有意水準は5%未満とした。


【結果】

退院群と転院群間の単変量解析では,年齢(48.3±13.1vs.69.7±12.9歳,p<0.0001),在院日数(46.4±12.0日vs.76.2±43.8日,p<0.001),最低TLC(1008.6±557.2vs.663.9±262.9,p<0.05),最低Alb(2.8±0.7vs.2.4±0.4,p<0.001),最低TP(5.9±1.0vs.5.3±0.9,p<0.01),入院時意識レベル(p<0.01),シャント術の有無(p<0.01)に有意差を認めた。多重ロジスティック回帰分析では,年齢(p<0.0001),在院日数(p<0.01),最低TLC(p<0.05),最低Alb(P<0.01)が転帰に関連する因子となった。最低TLC,最低Alb,最低TPにおいては,年齢と在院日数にそれぞれ相関を認めた。


【結論】

SAH患者の転帰と,栄養状態の関連を検討した。先行研究によると,Alb最低値は転帰との関連性は無いとの報告もあるが,本研究ではTLC,Alb,TPすべての最低値において,転帰との関連性を認めた。SAHではしばしば高侵襲治療,水頭症,脳血管攣縮などの影響から異化が亢進するといわれる。低栄養状態で蛋白合成が十分に行えない患者に対し,負荷量を考慮しない理学療法を強いることは異化亢進や免疫力,体力低下を助長し,転帰に悪影響を及ぼしかねない。従って,多職種と連携して刻々と変化する栄養状態を十分に把握し,理学療法プログラムを見直す必要があると考える。今後は,栄養状態の改善が転帰にどのように影響するかをさらに検討していく。また他の脳卒中病型とも比較検討したい。