第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P17

Sat. May 28, 2016 2:50 PM - 3:50 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-17-4] rt-PA静注療法後の急性期脳梗塞患者における早期離床の安全性と効果

予備的検討

古市あさみ1, 野添匡史1,2, 金居督之1, 久保宏紀1, 北村友花1, 山本実穂1, 間瀬教史2, 島田真一3 (1.伊丹恒生脳神経外科病院リハビリテーション部, 2.甲南女子大学看護リハビリテーション学部理学療法学科, 3.伊丹恒生脳神経外科病院脳神経外科)

Keywords:rt-PA静注療法, 急性期脳梗塞, 早期離床

【はじめに,目的】

rt-PA静注療法(以下rt-PA)後の急性期脳梗塞患者は症候性頭蓋内出血を発症する可能性が高いといわれているが,そのような患者に対する早期離床がどの程度安全か,ほとんど検討されていない。特に,欧米人と比べてアジア人では頭蓋内出血の発生頻度が高いことからも,その検討は重要である。本研究の目的は,rt-PA後の急性期脳梗塞患者に対する早期離床の安全性について検討することである。


【方法】

対象は2013年4月から2015年9月までに脳梗塞発症にて入院となり,rt-PAを施行した患者のうち,発症後2週間以上当院で入院加療を行い,かつリハビリテーション(以下リハビリ)が実施された連続18例(年齢75.5±9.4歳,男性10例,rt-PA群)。安全性については,入院後2週間におけるリハビリ実施中における有害事象の発生頻度,リハビリ非実施時も含む症候性頭蓋内出血発生頻度,呼吸器合併症,深部静脈血栓,肺塞栓,心疾患といった重篤な合併症発生頻度,尿路感染症や褥瘡といった軽度な合併症の発生頻度について検討した。患者属性,離床(車いす乗車)開始日は診療録より後方視的に調査した。そして,同期間に脳梗塞にて入院となり,rt-PA非適応となった患者で,年齢,性別,リハビリ開始後最重症時のNIHSSをマッチさせた18例(対照群)についても同様の項目について調査した。統計学的検定として,対応のないt-検定もしくはχ2検定を用いて検討した。統計学的検定はSPSS ver 15.0を用いて行い,危険率は5%未満とした。


【結果】

離床開始は主治医と相談の上,対照群に関しては入院翌日より行われていたが,rt-PA群に関しては少なくとも発症24時間以内は安静臥床が指示されることがほとんどで,結果的に離床開始日において有意差が認められた(3.8±2.9日:2.1±1.4日,p<0.02)。リハビリ実施中の有害事象発生頻度については差がなく(9件/889単位(1.0%):10件/1111単位(0.9%)),症候性頭蓋内出血はrt-PA群で2例(11%)に認められていたが,2例とも離床開始前であった。重篤な合併症発生頻度(2例(11%):2例(11%)),軽度の合併症発生頻度(3例(17%):5例(28%),p=0.16)においても差は認められなかった。


【結論】

一般にrt-PA後36時間以内は症候性頭蓋内出血のリスクが高く,本研究の対象者においても2例で症候性頭蓋内出血を認めたが,ともに離床開始前であった。そして,より早期に離床が実施されていた非rt-PA後と比較しても有害事象及び合併症の発生頻度に差はなかったことからも,rt-PA静注療法後は安全性を十分確認した上で,離床を行っていくことでも一定の効果は認められるのではないかと考えられた。