第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P17

2016年5月28日(土) 14:50 〜 15:50 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-17-5] 脳卒中患者における意欲はどのリハビリテーションの帰結に影響するか

渡辺智也1, 小島伸枝1, 高村雅二2, 小川太郎3 (1.社会医療法人社団カレスサッポロ時計台記念病院リハビリテーション部理学療法科, 2.社会医療法人社団カレスサッポロ時計台記念病院リハビリテーション部, 3.社会医療法人社団カレスサッポロ時計台記念病院総合リハビリテーションセンター)

キーワード:リハビリテーション帰結, 意欲, 脳卒中

【目的】

心理面がリハビリテーション(以下リハ)の帰結(Quality of lifeなど)に影響する事は報告されているが,意欲がどのリハ帰結に影響するかといった詳細な報告は見当たらない。本研究は,脳卒中患者の意欲が,機能と能力のどちらの帰結に影響があるかを明らかにすることを目的とした。


【方法】

平成26年12月以降当院に入院し平成27年9月迄に2回以上の評価を行った脳卒中患者で,取込基準は,入院時Functional Independence Measure(以下FIM)が40~80点,入院時評価から1ヶ月(25~30日)後に再評価を実施,再評価までの期間でVitality Index(以下VI)に変化がない症例とし,除外基準は,多発例,JCS2桁以上の意識障害,神経・運動器疾患の合併とした。対象は10名(74.8±9.7歳,左片麻痺3名,発症から初回評価まで57.8±15.9日)。評価項目は,機能評価のStroke Impairment Assessment Scale(以下SIAS),能力評価のFIM-Motor(以下FIM-M),FIM-Cognitive(以下FIM-C),Functional Movement Scale(以下FMS)とし,各項目の利得を算出した。各利得を目的変数,年齢・発症から初回評価までの期間・入院時VI・Mini Mental State Examination・請求単位数の合計を説明変数とし,各々の相関係数を算出した。統計にはPearsonの積率相関係数とSpearmanの順位相関係数を用い,有意水準は5%とした。

また,取込・除外基準が同一で意欲変化を生じた症例が3名(症例A:74歳,左片麻痺 症例B:88歳,左片麻痺 症例C:84歳,左片麻痺)おり,有意な相関の項目の回帰式と座標の距離を算出した。

【結果】

対象10名の入院時SIASは41.2±15.2点,FIM-Mは36.7±11.4点,FIM-Cは19.2±6.7点,FMSは11.6±9.7点であった。

有意な相関が得られたのは,入院時VIとFIM-M利得(p=0.046,r=0.64)のみであり,回帰式は(FIM-M利得)=2.46×(入院時VI)-4.94となった。

症例A(入院時VI5→10)・B(入院時VI3→4)と回帰式との距離は6.27,8.50(共に回帰式よりFIM-Mが大きい)であり,VI変化のなかった10症例(0.24-3.87)と比べ大きかった。症例Cと回帰式の距離は1.03だったが,その後利得が得られず退院時にはFIM-Mが4点低下していた。


【考察】

FIMの中等症患者において,回復期入院後1ヶ月という期間では,FIM-M利得は年齢や発症からの期間といった従来の指摘因子よりも意欲の影響が強かった。また,意欲変化例から意欲向上とFIM-M利得との関連,意欲低下と中長期的なリハ効果との関連が推察された。但し,帰結と意欲の方向関係性が明確でない事,意欲変化例が少数である事,1か月という短期間の検討である事から,長期的なデータ蓄積と多変量解析など多要因の検討が今後の課題である。

【理学療法研究としての意義】

入院後1ヶ月のFIM-M利得と意欲は関連した。経過で意欲を向上させる事はFIM-M利得を向上させる可能性が示唆され,意欲を向上させる取り組みの必要性が示唆された。