第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P18

Sat. May 28, 2016 2:50 PM - 3:50 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-18-1] 急性期病棟における被殻出血症例の独歩獲得率

實結樹, 宮原拓也, 濱野祐樹, 小野田翔太 (上尾中央総合病院リハビリテーション技術科)

Keywords:被殻出血, 血管支配領域, 独歩獲得率

【はじめに,目的】

山口らは,被殻出血症例を血管支配領域別に6タイプに分類し,回復期病棟における独歩獲得率を調査している。急性期病棟においても,画像所見を含めた総合的な判断で症例の方向性を検討する必要がある。しかし,急性期のComputed Tomography(以下;CT)画像にて独歩獲得率を調査した研究は少ない。今回,被殻出血症例における当院退院時の独歩獲得率を,発症時頭部CT画像を用いて血管支配領域別に検討することを目的とした。


【方法】

対象は,2013年1月から2015年6月までに入院し,退院した被殻出血症例48例のうち,既往に脳血管疾患を有する症例を除外した39例(男性;30例,女性;9例,年齢64±14.2歳,左;18例,右;21例)とした。急性期頭部CT画像(撮影日;発症1日)を用いて出血位置を確認し,Chungらが報告している6タイプに分類した。Heubner's動脈領域を前方タイプ,内側レンズ核線条体動脈領域を中間タイプ,前脈絡叢動脈領域を後内側タイプ,外側レンズ核線条体動脈後内側枝領域を後外側タイプ,外側レンズ核線条体動脈最外側枝領域を外側タイプ,線条体と内包を含む大血腫を大出血タイプとした。退院時のFunctional Ambulation Classification(以下;FAC)の0から3を独歩不可能,4・5を独歩可能とし,各タイプにおける独歩獲得率を求めた。また,独歩獲得率,退院時FACの点数,Brunnstrom stage(以下;BRS),Barthel index,在院日数を各タイプで比較した。独立した多群の差の検定としてKruskal-Wallis検定を行い,多重比較としてSteel-Dwass法を行った。前方タイプと後内側タイプは,症例数が少ない(いずれも2名)ため,統計解析から除外し,残りの4群で上記統計解析を行った。統計学的解析はR2.8.1を用いた。有意水準はいずれもp<0.05とした。


【結果】

血管支配領域別の症例数は,中間タイプ14名,後外側タイプ5名,外側タイプ7名,大出血タイプ9名であった。中間タイプの独歩獲得率は79%, BRS;II7%IV29%V21%VI43%,後外側タイプの独歩獲得率は80%,BRS;V40%VI60%,外側タイプの独歩獲得率は100%,BRS;VI100%,大出血タイプの独歩獲得率は22%,BRS;II67%III22%IV11%であった。独歩獲得率は,大出血タイプと中間タイプ,大出血タイプと外側タイプで有意差がみとめられた(p<0.05)。BRSは,大出血タイプと,中間タイプ・外側タイプ・後外側タイプのいずれも有意差がみとめられた(p<0.01)。


【結論】

独歩獲得率は,大出血タイプと中間タイプ・外側タイプで有意差があり,BRSは,大出血タイプと,中間タイプ・外側タイプ・後外側タイプにおいて有意差がみとめられた。大出血タイプでは出血によって,内包・放線冠などを損傷したことで,重度な麻痺となり,独歩獲得に影響を及ぼしたと考える。また,山口らによると,回復期での独歩獲得率は大出血タイプで13%,外側タイプは94%,中間タイプは86%と今回と類似値を示している。発症時の頭部CTにおいても,独歩獲得について重要な情報になることが示された。