[P-NV-19-3] 脳卒中発症後30日目までの基本動作能力の継時的変化~重症度別による検討~
Keywords:脳卒中, 基本動作能力, 継時的変化
【はじめに,目的】
脳卒中発症後は早期から予後予測を行うことが勧められている。予後予測から治療戦略を検討することは有益であり,ADLや歩行においては様々な予後予測が報告されている。しかし,基本動作の予後に関する報告は少ない。基本動作の継時的変化を調査することは,治療戦略を検討する一助となる。本研究の目的は,脳卒中発症後30日までにおける基本動作能力の継時的変化を調査し,脳卒中重症度毎による比較をすることである。
【方法】
対象は本学附属4病院における,成人脳卒中患者であり2012年1月1日~2015年9月30日までに入院し,リハビリテーションを開始した患者で発症から10日目,30日目に評価が可能であった患者56名(脳梗塞36名,脳出血20名,平均年齢68.1±12歳)とした。くも膜下出血の患者,発症から7日以降に入院した症例は除外した。
方法は,理学療法開始時の年齢,性別,診断名,脳卒中重症度(NIHSS),基本動作能力(ABMSII:寝返り・起き上がり・座位保持・立ち上がり・立位保持の5項目を1禁止,2全介助,3部分介助,4監視,5修正自立,6自立の6段階にて評価した合計),更に発症から10日目,30日目のABMSIIも診療録より調査した。統計解析はNIHSSが1から7点を軽度群(n=28),8から16点を中等度群(n=18),17点以上を重度群(n=10)とし,ABMSIIの合計点に重症度と評価時期が影響しているかについて検討した。各重症度の評価時期での比較にはFriedman検定を用い,各評価時期の重症度での比較にはKruskal-Wallis検定を用いた。多重比較法にはBonferroniの方法を用いた。有意水準は5%未満とした。
【結果】
Friedman検定,Kruskal-Wallis検定の結果,いずれも有意差を認めた。多重比較法の結果,重症度別の評価時期の比較では重度群の初回と10日目に有意差を認めず,その他の比較では有意差を認めた。各評価時期における重症度での比較では,初回,30日目の中等度群と重度群に有意差を認めず,その他の比較では有意差を認めた。各重症度の,ABMSII合計点の中央値と四分位範囲は,軽度群が初回15(8-25.75),10日目28.5(20-30),30日目30(28-30)であり,中等度群は初回7(6-10),10日目14(11-18.5),30日目21(15.75-26.25),重度群は初回6(5.75-6),10日目6(5-6.5),30日目15(10.75-20.5)であった。
【結論】
基本動作能力は,初回から30日目までに各重症度において有意な改善を認めた。重度群では初回と10日目に有意差を認めないものの,10日目から30日目に有意差を認めており,10日目以降に改善が期待できると考えられた。重度群と中等度群は10日目に有意差を認めているものの,30日目には有意差を認めておらず,重度群と中等度群は回復過程が異なると考えられた。軽度群は10日目に25%,30日目に50%が合計点を30としており,天井効果があると考えられた。基本動作能力は重症度によらず改善が期待できるが,重症度により回復過程が異なっていることが示された。
脳卒中発症後は早期から予後予測を行うことが勧められている。予後予測から治療戦略を検討することは有益であり,ADLや歩行においては様々な予後予測が報告されている。しかし,基本動作の予後に関する報告は少ない。基本動作の継時的変化を調査することは,治療戦略を検討する一助となる。本研究の目的は,脳卒中発症後30日までにおける基本動作能力の継時的変化を調査し,脳卒中重症度毎による比較をすることである。
【方法】
対象は本学附属4病院における,成人脳卒中患者であり2012年1月1日~2015年9月30日までに入院し,リハビリテーションを開始した患者で発症から10日目,30日目に評価が可能であった患者56名(脳梗塞36名,脳出血20名,平均年齢68.1±12歳)とした。くも膜下出血の患者,発症から7日以降に入院した症例は除外した。
方法は,理学療法開始時の年齢,性別,診断名,脳卒中重症度(NIHSS),基本動作能力(ABMSII:寝返り・起き上がり・座位保持・立ち上がり・立位保持の5項目を1禁止,2全介助,3部分介助,4監視,5修正自立,6自立の6段階にて評価した合計),更に発症から10日目,30日目のABMSIIも診療録より調査した。統計解析はNIHSSが1から7点を軽度群(n=28),8から16点を中等度群(n=18),17点以上を重度群(n=10)とし,ABMSIIの合計点に重症度と評価時期が影響しているかについて検討した。各重症度の評価時期での比較にはFriedman検定を用い,各評価時期の重症度での比較にはKruskal-Wallis検定を用いた。多重比較法にはBonferroniの方法を用いた。有意水準は5%未満とした。
【結果】
Friedman検定,Kruskal-Wallis検定の結果,いずれも有意差を認めた。多重比較法の結果,重症度別の評価時期の比較では重度群の初回と10日目に有意差を認めず,その他の比較では有意差を認めた。各評価時期における重症度での比較では,初回,30日目の中等度群と重度群に有意差を認めず,その他の比較では有意差を認めた。各重症度の,ABMSII合計点の中央値と四分位範囲は,軽度群が初回15(8-25.75),10日目28.5(20-30),30日目30(28-30)であり,中等度群は初回7(6-10),10日目14(11-18.5),30日目21(15.75-26.25),重度群は初回6(5.75-6),10日目6(5-6.5),30日目15(10.75-20.5)であった。
【結論】
基本動作能力は,初回から30日目までに各重症度において有意な改善を認めた。重度群では初回と10日目に有意差を認めないものの,10日目から30日目に有意差を認めており,10日目以降に改善が期待できると考えられた。重度群と中等度群は10日目に有意差を認めているものの,30日目には有意差を認めておらず,重度群と中等度群は回復過程が異なると考えられた。軽度群は10日目に25%,30日目に50%が合計点を30としており,天井効果があると考えられた。基本動作能力は重症度によらず改善が期待できるが,重症度により回復過程が異なっていることが示された。