第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P19

2016年5月28日(土) 16:00 〜 17:00 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-19-5] 当院における平成23年と平成27年の脳卒中患者の肩の痛みの保有率

中田圭亮, 上野奨太, 橋本結, 吉尾雅春 (千里リハビリテーション病院)

キーワード:脳卒中, 肩関節, 痛み

【はじめに,目的】Najenson(1971)やBohannon(1986)らは,脳卒中患者の約7割が肩の痛みを有すると報告しているが,現在の臨床場面ではそれよりも少ないように感じる。また,回復期リハビリテーション病棟における肩の痛みの保有率についての報告は少ない。今回,平成23年と27年の当院の脳卒中患者における入院時と入院後60日時点の肩の痛みの保有率について調査した。

【方法】対象は①平成23年,及び②平成27年の8月1日から9月30日に当院回復期リハビリテーション病棟に在院し,入院後60日以上が経過した脳卒中患者とした。①は39名,平均年齢66.4歳(25~91歳),発症後41.7±16.2日で入院,②は53名,平均年齢72.2歳(34~93歳),発症後40.2±15.5日で入院。調査は診療録からの情報収集で行い,平成27年は加えて担当セラピストを対象に質問紙法を用い,1)入院時・入院後60日目の他動運動時痛の有無,2)肩手症候群の有無,3)入院時・入院後60日目の上肢Brunnstrom stage(BS)を確認した。肩手症候群の判定には,日本版複合性局所疼痛症候群判定指標を用いた。それぞれの年の入院時・60日目の肩の痛みの保有者数,肩手症候群の保有者数から割合を算出し,1)と3)の調査結果をMann-Whitney検定にて分析した。


【結果】平成23年は入院時に15名(38.5%),入院後60日目に14名(35.9%)が,平成27年度は入院時に16名(30.2%),60日目に20名(37.4%)が肩の痛みを有していた。入院時から60日目まで継続して痛みを持っていたのは,平成23年が14名中12名,平成27年は20名中15名であり,入院後に痛みが出現したのは,平成23年が2名(5.1%),平成27年は5名(9.4%)であった。肩手症候群は,平成23年は入院時に2名(5.1%),60日目に1名(2.6%)が,平成27年は入院時に2名(3.8%),60日目に3名(5.7%)が有していた。平成23年は1名が,平成27年は2名が入院後時から60日目まで継続して肩手症候群を有していた。何れの年においても,60日目は無痛群に比べ有痛群が同時期のBSが有意に低く(p<0.01),入院時は同時期のBSと同様の傾向を認めたものの,有意差は認めなかった(平成23年p=0.053,平成27年p=0.012)。


【結論】当院脳卒中患者において麻痺側の肩の痛みの保有率は約4割,肩手症候群による肩の痛みは2.8~5.7%と過去の報告よりも少ないことが確認できた。平成23年と27年の肩の痛みの保有率に差は認めなかった。しかし,依然約4割の脳卒中患者が肩の痛みをもっていることが明らかとなった。肩の痛みはBSが低いほど保有する傾向にあり,また,入院時に痛みを持つと入院60日後も保有する割合が高い。そのため,発症後から肩の痛みを出さないように注意深くリハビリテーションをすすめる必要がある。