[P-NV-21-1] 歩行神経筋電気刺激装置を用いた歩行練習の即時的効果の検証
Keywords:ウォークエイド, 脳卒中片麻痺, 即時的効果
【はじめに,目的】
中枢神経疾患に対する電気刺激療法は,運動の再建,随意性の向上や痙縮の緩和などを目的として行われている。歩行神経筋電気刺激装置(米Innovative Neurotronics社製,帝人ファーマ株式会社,ウォークエイドⓇ,以下,WA)は,先行研究により歩行速度改善の効果が明らかにされているが,我が国では研究や報告の数は未だ少ない。そこで本研究は,WA使用による歩行練習によって,歩行速度が改善する即時的な効果の要因を筋電図学的に検証することを目的とした。
【方法】
回復期から慢性期の脳卒中片麻痺患者に対し,分析的臨床研究を行った。対象はゲイトソリューションデザイン(以下,GSD)を使用し,近位監視で30m以上の連続歩行が可能な脳卒中片麻痺患者8例(男性5名,女性3名)とした。下肢Brunnstrom Recovery StageはIII~VI,感覚障害は軽度~重度鈍麻であった。方法はWA使用での歩行練習をHAND modeにて10m行い,介入前後の10m歩行テストを実施した。測定は油圧抗力計測装置(パシフィックサプライ株式会社,ゲイトジャッジシステム)と表面筋電計を用いて,歩行中の麻痺側足関節角度,前脛骨筋と腓腹筋外側頭の筋電図を計測した。統計処理はWilcoxonの符号付順位検定を用い,WA使用前後での麻痺側初期接地(以下,IC)~荷重応答期(以下,LR),前遊脚期(以下,PSw)~遊脚初期(以下,ISw),ISw~遊脚終期(以下,TSw)の前脛骨筋と腓腹筋の筋活動量,IC時の麻痺側足関節背屈角度を比較した。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
10m歩行速度は,WA使用前後にて有意な改善がみられた(p<0.05)。また,WA使用後の麻痺側ISw~TSw時の腓腹筋筋活動量は,有意な低下がみられた(p<0.05)。麻痺側IC~LR時の前脛骨筋筋活動と足関節背屈角度,PSw~ISwの腓腹筋筋活動は数例の改善は認められたものの,有意差は認められなかった。
【結論】
WAは総腓骨神経に電気刺激を加えることで,前脛骨筋や腓骨筋の筋収縮を促し,足関節背屈を促すことができる。先行研究では,WAを歩行練習に併用することで,歩行速度の改善に効果があるとされており,本研究でも同様の結果が得られた。歩行速度改善の要因については,麻痺側遊脚期に腓腹筋の筋活動が抑制され,クリアランスの改善につながったことが示唆された。これは,WA使用前の麻痺側遊脚期に過活動していた腓腹筋に対して,総腓骨神経へ電気刺激を加えることで脛骨神経の相反抑制が働き,荷重移行期における腓腹筋の筋活動減少が円滑に行えたためであると考える。IC~LR時の前脛骨筋筋活動については,計測にGSDを使用したため,ヒールロッカー機能の補助が働き,有意差が認められなかったと考えられる。本研究より,GSDで介入することが困難であった麻痺側遊脚期にWAを併用する事で,歩行能力向上に貢献できる可能性がある。今後,症例数を増やし,長期的な介入効果について検討していきたい。
中枢神経疾患に対する電気刺激療法は,運動の再建,随意性の向上や痙縮の緩和などを目的として行われている。歩行神経筋電気刺激装置(米Innovative Neurotronics社製,帝人ファーマ株式会社,ウォークエイドⓇ,以下,WA)は,先行研究により歩行速度改善の効果が明らかにされているが,我が国では研究や報告の数は未だ少ない。そこで本研究は,WA使用による歩行練習によって,歩行速度が改善する即時的な効果の要因を筋電図学的に検証することを目的とした。
【方法】
回復期から慢性期の脳卒中片麻痺患者に対し,分析的臨床研究を行った。対象はゲイトソリューションデザイン(以下,GSD)を使用し,近位監視で30m以上の連続歩行が可能な脳卒中片麻痺患者8例(男性5名,女性3名)とした。下肢Brunnstrom Recovery StageはIII~VI,感覚障害は軽度~重度鈍麻であった。方法はWA使用での歩行練習をHAND modeにて10m行い,介入前後の10m歩行テストを実施した。測定は油圧抗力計測装置(パシフィックサプライ株式会社,ゲイトジャッジシステム)と表面筋電計を用いて,歩行中の麻痺側足関節角度,前脛骨筋と腓腹筋外側頭の筋電図を計測した。統計処理はWilcoxonの符号付順位検定を用い,WA使用前後での麻痺側初期接地(以下,IC)~荷重応答期(以下,LR),前遊脚期(以下,PSw)~遊脚初期(以下,ISw),ISw~遊脚終期(以下,TSw)の前脛骨筋と腓腹筋の筋活動量,IC時の麻痺側足関節背屈角度を比較した。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
10m歩行速度は,WA使用前後にて有意な改善がみられた(p<0.05)。また,WA使用後の麻痺側ISw~TSw時の腓腹筋筋活動量は,有意な低下がみられた(p<0.05)。麻痺側IC~LR時の前脛骨筋筋活動と足関節背屈角度,PSw~ISwの腓腹筋筋活動は数例の改善は認められたものの,有意差は認められなかった。
【結論】
WAは総腓骨神経に電気刺激を加えることで,前脛骨筋や腓骨筋の筋収縮を促し,足関節背屈を促すことができる。先行研究では,WAを歩行練習に併用することで,歩行速度の改善に効果があるとされており,本研究でも同様の結果が得られた。歩行速度改善の要因については,麻痺側遊脚期に腓腹筋の筋活動が抑制され,クリアランスの改善につながったことが示唆された。これは,WA使用前の麻痺側遊脚期に過活動していた腓腹筋に対して,総腓骨神経へ電気刺激を加えることで脛骨神経の相反抑制が働き,荷重移行期における腓腹筋の筋活動減少が円滑に行えたためであると考える。IC~LR時の前脛骨筋筋活動については,計測にGSDを使用したため,ヒールロッカー機能の補助が働き,有意差が認められなかったと考えられる。本研究より,GSDで介入することが困難であった麻痺側遊脚期にWAを併用する事で,歩行能力向上に貢献できる可能性がある。今後,症例数を増やし,長期的な介入効果について検討していきたい。