[P-NV-21-3] 長下肢装具と短下肢装具の作製者の歩行自立因子の比較検討
キーワード:下肢装具, 歩行, 片麻痺
【はじめに,目的】
近年長下肢装具(以下KAFO)を使用した早期からの歩行練習が推奨されており,報告もみられてきている。しかし短下肢装具(AFO)作成者との比較検討は少なく,KAFOの作成基準も明確ではない。そこでKAFOとAFOの対象者の特性を明らかにするとともに,KAFOとAFOそれぞれの歩行自立に関わる因子を後方視的に比較検討した。
【方法】
平成24年7月から平成27年7月まで当病院に入院していた脳卒中患者の中でAFOを作成した48名,年齢65.8±12.4歳とKAFOを作成した32名,年齢69±14.6歳を対象とした。調査項目は年齢,退院時のSIAS体幹機能項目の合計点,発症時のBrunnstrom recovery stage(以下BRS),退院時BRS,FIM認知項目の点数とした。尚,FIMの移動項目において6点以上を歩行自立と定義した。統計学的解析にはR2.8.1を使用し,KAFOとAFOの各項目においてMann-WhitneyのU検定を実施し,KAFOとAFO間での比較検討した。その後,多重共線性を避けるため相関分析を実施した。従属変数をKAFO使用群とAFO使用群それぞれの歩行自立の可否,独立変数を各調査項目としロジスティック回帰分析を実施した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
分析対象者は年齢64.9±17.1歳,KAFO自立群13名非自立群19名,AFO自立群28名非自立群20名であった。Mann-WhitneyのU検定においてKAFOとAFOの2群間比較において退院時BRS(P<0.05)に有意な差が認められた。KAFOでの歩行自立群・非自立群の2群間比較においてはSIAS体幹機能(オッズ比0.03,信頼区間0.001から0.89)とFIM認知項目(オッズ比0.57,信頼区間0.34から0.98)が抽出された。モデル全体の判別的中率は97%であった。AFOではSIAS体幹機能(オッズ比0.26,信頼区間0.11から0.58)FIM認知項目(オッズ比0.84,信頼区間0.73から0.96)が抽出された。モデル全体の判別的中率は85%であった。
【結論】
KAFOとAFOの2群間比較にて退院時BRSに差がみられたのは,KAFO作成対象者は重度の片麻痺患者が多いためと考えられる。また,KAFOとAFOの歩行自立群・非自立群の2群間比較にて体幹機能・認知機能に有意な差が見られた。先行研究では平野らは歩行自立には体幹機能や認知機能が歩行の可否に大きく影響していると述べており,今回の下肢装具使用者に限局した研究においても,先行研究の結果と同様に歩行自立には麻痺の重症度より認知・体幹機能が大きく関与していた。これらのことは重度の片麻痺者であってもKAFOを使用する事により,高い認知・体幹機能があれば,歩行が自立に至る可能性があると考えられる。そのことにより,運動麻痺の改善のみでなく,体幹や認知機能へのアプローチの重要性が示唆された。
近年長下肢装具(以下KAFO)を使用した早期からの歩行練習が推奨されており,報告もみられてきている。しかし短下肢装具(AFO)作成者との比較検討は少なく,KAFOの作成基準も明確ではない。そこでKAFOとAFOの対象者の特性を明らかにするとともに,KAFOとAFOそれぞれの歩行自立に関わる因子を後方視的に比較検討した。
【方法】
平成24年7月から平成27年7月まで当病院に入院していた脳卒中患者の中でAFOを作成した48名,年齢65.8±12.4歳とKAFOを作成した32名,年齢69±14.6歳を対象とした。調査項目は年齢,退院時のSIAS体幹機能項目の合計点,発症時のBrunnstrom recovery stage(以下BRS),退院時BRS,FIM認知項目の点数とした。尚,FIMの移動項目において6点以上を歩行自立と定義した。統計学的解析にはR2.8.1を使用し,KAFOとAFOの各項目においてMann-WhitneyのU検定を実施し,KAFOとAFO間での比較検討した。その後,多重共線性を避けるため相関分析を実施した。従属変数をKAFO使用群とAFO使用群それぞれの歩行自立の可否,独立変数を各調査項目としロジスティック回帰分析を実施した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
分析対象者は年齢64.9±17.1歳,KAFO自立群13名非自立群19名,AFO自立群28名非自立群20名であった。Mann-WhitneyのU検定においてKAFOとAFOの2群間比較において退院時BRS(P<0.05)に有意な差が認められた。KAFOでの歩行自立群・非自立群の2群間比較においてはSIAS体幹機能(オッズ比0.03,信頼区間0.001から0.89)とFIM認知項目(オッズ比0.57,信頼区間0.34から0.98)が抽出された。モデル全体の判別的中率は97%であった。AFOではSIAS体幹機能(オッズ比0.26,信頼区間0.11から0.58)FIM認知項目(オッズ比0.84,信頼区間0.73から0.96)が抽出された。モデル全体の判別的中率は85%であった。
【結論】
KAFOとAFOの2群間比較にて退院時BRSに差がみられたのは,KAFO作成対象者は重度の片麻痺患者が多いためと考えられる。また,KAFOとAFOの歩行自立群・非自立群の2群間比較にて体幹機能・認知機能に有意な差が見られた。先行研究では平野らは歩行自立には体幹機能や認知機能が歩行の可否に大きく影響していると述べており,今回の下肢装具使用者に限局した研究においても,先行研究の結果と同様に歩行自立には麻痺の重症度より認知・体幹機能が大きく関与していた。これらのことは重度の片麻痺者であってもKAFOを使用する事により,高い認知・体幹機能があれば,歩行が自立に至る可能性があると考えられる。そのことにより,運動麻痺の改善のみでなく,体幹や認知機能へのアプローチの重要性が示唆された。