[P-NV-22-1] 急性期脳卒中患者における体幹失調がリハビリテーションの効果に与える影響
Keywords:急性期, 脳卒中, 体幹失調
【はじめに,目的】
脳卒中患者において,体幹機能が歩行や日常生活活動(以下ADL)に影響を及ぼす要因の一つであることは周知されている。体幹失調と歩行・移動能力の相関性が指摘されているが,体幹失調がリハビリテーション(以下リハ)の効果に与える影響についての報告は多くない。今回われわれは,椎骨脳底動脈領域の急性期脳卒中患者における体幹失調と運動障害・ADLの臨床経過との関係について検討したので報告する。
【方法】
2014年1月1日から2015年10月31日までの間に,当院急性期病棟に入院した椎骨脳底動脈領域の脳卒中のうち運動失調を呈した18例(68±10歳)を対象とした。但し,重度意識障害及び運動麻痺を呈した例は除外した。内山の躯幹協調機能ステージを用いて体幹失調を判別し,入院時にステージがIであった患者をA群,ステージがII以上であった患者をB群の2群に分け,入院時及び退院時のScale for the Assessment and Rating of Ataxia(以下SARA),Berg Balance Scale(以下BBS),Functional Ambulation Category(以下FAC),機能的自立度評価法(以下FIM)の測定を行った。2群における入院時及び退院時のSARA,BBS,FAC,FIM運動項目合計点(以下FIM-M),FIM認知項目合計点(以下FIM-C)のスコアの比較をWilcoxonの符号順位検定を用いて行った。2群間における一日あたりのSARA,BBS,FAC,FIM-M,FIM-C利得の比較はマン・ホイットニーのU検定を用いて行い,全ての統計学的検定の有意水準は5%未満とした。
【結果】
A群が8例でB群は10例であり,転帰はA群の全例が自宅,B群は5例が自宅,5例が回復期転棟となった。在院日数はA群が16±3.6日,B群が27日±7.8日であった。A群のスコアの中央値[入院時/退院時(点)]はSARAが5/3,BBSが50/52,FACが3/4,FIM-Mが61/81,FIM-Cが32/35であった。B群のスコアの中央値[入院時/退院時(点)]はSARAが13/8,BBSが15/50,FACが1/4,FIM-Mが43/79,FIM-Cが21/29であった。入院時と退院時のスコア間において,両群ともSARA,BBS,FAC,FIM-M,FIM-Cにおいて有意差を認めた。各評価の一日あたりにおける利得はSARA,BBS,FAC,FIM-M,FIM-Cのスコアにおいて,両群間で有意差を認めなかった。
【結論】
今回われわれは,体幹失調とリハの効果に与える影響について調査した。今回の検討により,体幹失調を認める症例は入院時のバランス機能及び歩行能力が低下し,ADL障害が重症化しやすく,入院が長期化する傾向が示された。体幹失調の有無に関わらず退院時のSARA,BBS,FAC,FIM-M,FIM-Cのそれぞれのスコアは,入院時に比べ有意に改善していたが,一日あたりの利得で有意差を認めなかった。急性期脳卒中患者においては,体幹失調を伴う場合でもリハを継続して行っていくことで,体幹失調を認めない症例にも劣らないレベルの機能改善やADLの向上を目指していくことが可能であると考えられた。
脳卒中患者において,体幹機能が歩行や日常生活活動(以下ADL)に影響を及ぼす要因の一つであることは周知されている。体幹失調と歩行・移動能力の相関性が指摘されているが,体幹失調がリハビリテーション(以下リハ)の効果に与える影響についての報告は多くない。今回われわれは,椎骨脳底動脈領域の急性期脳卒中患者における体幹失調と運動障害・ADLの臨床経過との関係について検討したので報告する。
【方法】
2014年1月1日から2015年10月31日までの間に,当院急性期病棟に入院した椎骨脳底動脈領域の脳卒中のうち運動失調を呈した18例(68±10歳)を対象とした。但し,重度意識障害及び運動麻痺を呈した例は除外した。内山の躯幹協調機能ステージを用いて体幹失調を判別し,入院時にステージがIであった患者をA群,ステージがII以上であった患者をB群の2群に分け,入院時及び退院時のScale for the Assessment and Rating of Ataxia(以下SARA),Berg Balance Scale(以下BBS),Functional Ambulation Category(以下FAC),機能的自立度評価法(以下FIM)の測定を行った。2群における入院時及び退院時のSARA,BBS,FAC,FIM運動項目合計点(以下FIM-M),FIM認知項目合計点(以下FIM-C)のスコアの比較をWilcoxonの符号順位検定を用いて行った。2群間における一日あたりのSARA,BBS,FAC,FIM-M,FIM-C利得の比較はマン・ホイットニーのU検定を用いて行い,全ての統計学的検定の有意水準は5%未満とした。
【結果】
A群が8例でB群は10例であり,転帰はA群の全例が自宅,B群は5例が自宅,5例が回復期転棟となった。在院日数はA群が16±3.6日,B群が27日±7.8日であった。A群のスコアの中央値[入院時/退院時(点)]はSARAが5/3,BBSが50/52,FACが3/4,FIM-Mが61/81,FIM-Cが32/35であった。B群のスコアの中央値[入院時/退院時(点)]はSARAが13/8,BBSが15/50,FACが1/4,FIM-Mが43/79,FIM-Cが21/29であった。入院時と退院時のスコア間において,両群ともSARA,BBS,FAC,FIM-M,FIM-Cにおいて有意差を認めた。各評価の一日あたりにおける利得はSARA,BBS,FAC,FIM-M,FIM-Cのスコアにおいて,両群間で有意差を認めなかった。
【結論】
今回われわれは,体幹失調とリハの効果に与える影響について調査した。今回の検討により,体幹失調を認める症例は入院時のバランス機能及び歩行能力が低下し,ADL障害が重症化しやすく,入院が長期化する傾向が示された。体幹失調の有無に関わらず退院時のSARA,BBS,FAC,FIM-M,FIM-Cのそれぞれのスコアは,入院時に比べ有意に改善していたが,一日あたりの利得で有意差を認めなかった。急性期脳卒中患者においては,体幹失調を伴う場合でもリハを継続して行っていくことで,体幹失調を認めない症例にも劣らないレベルの機能改善やADLの向上を目指していくことが可能であると考えられた。