[P-NV-23-1] 脳卒中片麻痺患者における立位回転動作の動作戦略の検討―麻痺側回転と非麻痺側回転の比較―
キーワード:立位回転動作, 動作戦略, 左右差
【はじめに,目的】
動作分析を行う際に動作戦略の評価は重要である。立位回転動作は一側下肢を軸とした回転動作であり,脳卒中片麻痺患者のように非対称性を呈する対象者では回転方向の違いが動作戦略に影響を及ぼす可能性があるが,動作戦略の観点から立位回転動作の回転方向間の違いは検討されていない。本研究の目的は,脳卒中片麻痺患者の立位回転動作の動作戦略の回転方向間の違いを検討することである。
【方法】
対象は慢性期の脳卒中片麻痺患者27名とした(平均年齢69.7±11.2歳:平均値±標準偏差)。取り込み基準は,10m歩行が監視レベル以上で動作の指示理解が良好なこととした。評価項目はMotricity Index(MI),歩行速度,Functional Ambulation Category(FAC)とした。立位回転動作はClinical Assessment Test of 180°Standing Turn Test(CAT-STS)を用い,麻痺側および非麻痺側方向への動作について動画を使用して評価した。CAT-STSは小林らが開発した評価尺度で,信頼性および妥当性は検証済みである。進行方向,use of space(運動の範囲),足の運び,開始,停止,不安定性,非流動性の7項目からなり,進行方向を除く評価項目から合計点(Total score)を算出し,6-13点に分布する。得点が高いほど健常者に近い動作戦略と解釈される。統計学的な分析には,SPSS 22.0 J for windowsを用いた。回転方向間の立位回転動作の所要時間と歩数,Total scoreの比較に対応のあるt検定を用いた。有意水準は5%とした。
【結果】
平均MI,平均歩行速度,FACは,それぞれ59.0±23.0点,0.39±0.25m/sec,4(中央値)であった。麻痺側および非麻痺側方向への立位回転動作の所要時間,歩数,Total scoreは,それぞれ8.9±4.5秒と8.9±4.2秒,12.3±7.4歩と11.3±5.1歩,9.7±1.8点と9.3±1.7点であり,Total scoreのみに有意差を認めた。15名の対象はTotal scoreが両方向で同得点であり,9名が麻痺側方向,3名が非麻痺側方向の方が高値であった。項目別では,進行方向で7名,use of spaceで5名,足の運びで0名,開始で5名,停止で4名,不安定性で2名,流動性で0名が回転方向間で点数が異なっていた。これらにはMIや歩行能力が低い,または立位回転動作の所要時間が大きい対象が含まれていた。
【結論】
Total scoreの回転方向間の差は小さく,脳卒中片麻痺患者では回転方向間の動作戦略の差はわずかであった。しかし,動作戦略が回転方向間で差を認めた対象が12名いた。したがって,脳卒中片麻痺患者の立位回転動作の動作戦略を評価する際には,麻痺側回転と非麻痺側回転のいずれも評価を行い,回転方向間に差がないのか,差がある際にはいずれの方向が適切かを確認する必要がある。また,MIが低い対象者や立位回転動作能力の低い対象では,動作戦略の差に着目する必要がある。
動作分析を行う際に動作戦略の評価は重要である。立位回転動作は一側下肢を軸とした回転動作であり,脳卒中片麻痺患者のように非対称性を呈する対象者では回転方向の違いが動作戦略に影響を及ぼす可能性があるが,動作戦略の観点から立位回転動作の回転方向間の違いは検討されていない。本研究の目的は,脳卒中片麻痺患者の立位回転動作の動作戦略の回転方向間の違いを検討することである。
【方法】
対象は慢性期の脳卒中片麻痺患者27名とした(平均年齢69.7±11.2歳:平均値±標準偏差)。取り込み基準は,10m歩行が監視レベル以上で動作の指示理解が良好なこととした。評価項目はMotricity Index(MI),歩行速度,Functional Ambulation Category(FAC)とした。立位回転動作はClinical Assessment Test of 180°Standing Turn Test(CAT-STS)を用い,麻痺側および非麻痺側方向への動作について動画を使用して評価した。CAT-STSは小林らが開発した評価尺度で,信頼性および妥当性は検証済みである。進行方向,use of space(運動の範囲),足の運び,開始,停止,不安定性,非流動性の7項目からなり,進行方向を除く評価項目から合計点(Total score)を算出し,6-13点に分布する。得点が高いほど健常者に近い動作戦略と解釈される。統計学的な分析には,SPSS 22.0 J for windowsを用いた。回転方向間の立位回転動作の所要時間と歩数,Total scoreの比較に対応のあるt検定を用いた。有意水準は5%とした。
【結果】
平均MI,平均歩行速度,FACは,それぞれ59.0±23.0点,0.39±0.25m/sec,4(中央値)であった。麻痺側および非麻痺側方向への立位回転動作の所要時間,歩数,Total scoreは,それぞれ8.9±4.5秒と8.9±4.2秒,12.3±7.4歩と11.3±5.1歩,9.7±1.8点と9.3±1.7点であり,Total scoreのみに有意差を認めた。15名の対象はTotal scoreが両方向で同得点であり,9名が麻痺側方向,3名が非麻痺側方向の方が高値であった。項目別では,進行方向で7名,use of spaceで5名,足の運びで0名,開始で5名,停止で4名,不安定性で2名,流動性で0名が回転方向間で点数が異なっていた。これらにはMIや歩行能力が低い,または立位回転動作の所要時間が大きい対象が含まれていた。
【結論】
Total scoreの回転方向間の差は小さく,脳卒中片麻痺患者では回転方向間の動作戦略の差はわずかであった。しかし,動作戦略が回転方向間で差を認めた対象が12名いた。したがって,脳卒中片麻痺患者の立位回転動作の動作戦略を評価する際には,麻痺側回転と非麻痺側回転のいずれも評価を行い,回転方向間に差がないのか,差がある際にはいずれの方向が適切かを確認する必要がある。また,MIが低い対象者や立位回転動作能力の低い対象では,動作戦略の差に着目する必要がある。