第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P23

Sun. May 29, 2016 10:00 AM - 11:00 AM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-23-2] 重症片麻痺患者に対する立位保持環境の難易度

平行棒と垂直棒の比較

富田駿1, 中島秀太1, 中島秀太1, 加藤宗規2, 山崎裕司3 (1.医療法人社団千葉秀心会東船橋病院, 2.了德寺大学, 3.高知リハビリテーション学院)

Keywords:片麻痺, 立位, 運動学習

【はじめに,目的】段階的な難易度調整を行うことにより動作を成功させることが効果的な学習につながる。一般に重症片麻痺者の立位練習開始時には平行棒が利用されるが,健側支持基底面上に重心線をコントロールすることが難しく,多大な介助を要する。一方,健側に垂直に立った棒(垂直棒)を把持してぶら下がるように立位姿勢をとらせた場合,体幹の抗重力運動を補助する役割に加え,重心線は自然と健側に寄ることになる。今回,平行棒と垂直棒の2つの環境において立位保持時間を比較し,その難易度についてシングルケースデザインを用いて検討した。

【方法】対象は,重症片麻痺を呈した2症例である。症例A(年齢74歳)の診断名は右中大脳動脈梗塞であり,運動麻痺はStroke Impairment Assessment Set(以下;SIAS)の運動項目にて上肢運動機能が(上肢近位テスト-上肢遠位テスト)0-0,下肢運動機能(下肢近位(股)テスト-下肢近位(膝)テスト-下肢遠位テスト)0-0-0であった。半側空間無視がみられ基本動作は全て全介助であった。症例B(年齢81歳)の診断名は右中大脳動脈・後大脳動脈梗塞であり,重度の身体失認を認めた。このためSIASの精査は困難であった。重度の身体失認の影響により動作中に麻痺側下肢筋群の随意的な収縮はみられず,基本動作は全て全介助であった。症例Aは6病日より介入開始,症例Bは13病日より介入を開始した。シングルケースデザインは操作交代デザインを用いた。統制条件として支持物なしでの立位,条件Aとして平行棒片手支持での立位,条件Bとして垂直棒支持での立位保持時間を計測した。これら3条件をランダムな順序にて各1セッションずつ5日間(3条件×5日間=15セッション)実施した。起立動作は介助にて行い,立位となってからの保持時間を計測した。なお,立位練習は下肢装具,アームスリング装着下で実施した。平行棒および,垂直棒から非麻痺側の支持脚下肢までの距離は10cmで統一した。平行棒の高さは症例の大転子に合わせた。統計学的手法としては,マンホイットニーのU検定を用い,有意水準は5%未満とした。

【結果】平均立位保持時間(最大値-最小値)は,症例Aの統制条件で0秒(0秒-0秒),条件Aでは4.6秒(6秒-4秒),条件Bで22.2秒(26秒-18秒)であった。症例Bの統制条件で0秒(0秒-0秒),条件Aで9秒(12秒-5秒),条件Bで40.4秒(36秒-46秒)であった。2症例とも統制条件<条件A<条件Bの順に立位保持時間が長かった(p<0.05)。

【結論】重症片麻痺者に対する立位保持練習では,平行棒支持よりも垂直棒支持の方が難易度は低いと考えられた。したがって,立位保持練習開始時には難易度が低い垂直棒を用いるべきと考えられる。