[P-NV-23-3] 初発の成人脳卒中患者における麻痺側上肢痛に関する縦断的調査
Keywords:脳卒中, 麻痺側, 上肢痛
【はじめに,目的】
脳卒中後の患者において,麻痺側の肩から手指の範囲に痛みを呈する事例が報告されているものの,その状態を経時的に調査した報告は少ない。麻痺側上肢の痛みについては不明な点が多く,臨床において課題となる。本研究では,脳卒中後の患者における上肢痛の有無について聞き取り調査を行い,上肢痛に関する経時的変化と,その臨床的特徴を検討することを目的とする。
【方法】
2013年9月~2015年8月の2年間に当院脳外科に3か月以上入院し,リハビリテーションを実施した初発の成人脳卒中患者のうち,遷延化した意識障害・著しい認知機能低下・重度の失語症により全入院期間において聞き取り調査が困難な者,発症前から上肢痛を有していた者,入院中に脳卒中を再発して状態が悪化した者を除く75名を対象とした。脳卒中発症後2週,1か月,2か月,3か月経過時点にそれぞれ麻痺側上肢痛の聞き取り調査および運動麻痺(Brunnstrom stage:Brs),上肢感覚障害,基本動作能力,基本的日常生活動作能力(Barthel index:BI)の評価を行った。脳卒中後の上肢痛の定義として以下の4つの必要条件を定めた。①脳卒中の既往があり,その発症以降に痛みが現れた病歴がある,②中枢神経系の病変に対応する身体領域の痛みである,③不快感やしびれのみは「痛み」としない,④肩から手指までの領域である。上肢痛あり群となし群の比較をSPSS ver20を用いて行い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
入院期間中に麻痺側上肢痛を有した者は32名(42.7%)であった。その内,入院3か月経過時点までに痛みが消失した者(以下,消失型)は3名,入院中に1度痛みが消失したが再度発生した者(以下,再発型)は2名,1度発生した痛みが3か月経過時点まで持続した者(以下,持続型)は27名であった。上肢痛の初発時期は,2週:6名,1か月:11名,2か月:8名,3か月:7名であった。上肢痛有病者数の経時的変化では,2週:6名(8.0%),1か月:15名(20.0%),2か月:21名(28.0%),3か月:29名(38.7%)と経過とともに増加する傾向となった。臨床的特徴では,「消失型」は病棟生活において肩のみに痛みを訴えるものの1か月間程度で痛みは消失していた。「再発型」は発症2週時点で麻痺側上肢の他動運動時に肩の痛みを訴えるが,1か月以内に1度消失し,発症3か月時点で肩以外の部位にも痛みが再度発生していた。「持続型」は肩中心に動作時痛を訴えるものが多いが,肘や手関節へと痛みが拡がっている者もおり,その症状は多様であった。上肢痛あり群となし群の比較では,発症2週時点の上肢感覚障害を除く全て時点での運動麻痺,上肢感覚障害,BIにおいて有意差が認められた。
【結論】
脳卒中後の麻痺側上肢痛について考える際には,発症初期の機能障害や能力障害の程度だけではなく,痛みの拡がりについても評価し,対応していく必要が示唆された。
脳卒中後の患者において,麻痺側の肩から手指の範囲に痛みを呈する事例が報告されているものの,その状態を経時的に調査した報告は少ない。麻痺側上肢の痛みについては不明な点が多く,臨床において課題となる。本研究では,脳卒中後の患者における上肢痛の有無について聞き取り調査を行い,上肢痛に関する経時的変化と,その臨床的特徴を検討することを目的とする。
【方法】
2013年9月~2015年8月の2年間に当院脳外科に3か月以上入院し,リハビリテーションを実施した初発の成人脳卒中患者のうち,遷延化した意識障害・著しい認知機能低下・重度の失語症により全入院期間において聞き取り調査が困難な者,発症前から上肢痛を有していた者,入院中に脳卒中を再発して状態が悪化した者を除く75名を対象とした。脳卒中発症後2週,1か月,2か月,3か月経過時点にそれぞれ麻痺側上肢痛の聞き取り調査および運動麻痺(Brunnstrom stage:Brs),上肢感覚障害,基本動作能力,基本的日常生活動作能力(Barthel index:BI)の評価を行った。脳卒中後の上肢痛の定義として以下の4つの必要条件を定めた。①脳卒中の既往があり,その発症以降に痛みが現れた病歴がある,②中枢神経系の病変に対応する身体領域の痛みである,③不快感やしびれのみは「痛み」としない,④肩から手指までの領域である。上肢痛あり群となし群の比較をSPSS ver20を用いて行い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
入院期間中に麻痺側上肢痛を有した者は32名(42.7%)であった。その内,入院3か月経過時点までに痛みが消失した者(以下,消失型)は3名,入院中に1度痛みが消失したが再度発生した者(以下,再発型)は2名,1度発生した痛みが3か月経過時点まで持続した者(以下,持続型)は27名であった。上肢痛の初発時期は,2週:6名,1か月:11名,2か月:8名,3か月:7名であった。上肢痛有病者数の経時的変化では,2週:6名(8.0%),1か月:15名(20.0%),2か月:21名(28.0%),3か月:29名(38.7%)と経過とともに増加する傾向となった。臨床的特徴では,「消失型」は病棟生活において肩のみに痛みを訴えるものの1か月間程度で痛みは消失していた。「再発型」は発症2週時点で麻痺側上肢の他動運動時に肩の痛みを訴えるが,1か月以内に1度消失し,発症3か月時点で肩以外の部位にも痛みが再度発生していた。「持続型」は肩中心に動作時痛を訴えるものが多いが,肘や手関節へと痛みが拡がっている者もおり,その症状は多様であった。上肢痛あり群となし群の比較では,発症2週時点の上肢感覚障害を除く全て時点での運動麻痺,上肢感覚障害,BIにおいて有意差が認められた。
【結論】
脳卒中後の麻痺側上肢痛について考える際には,発症初期の機能障害や能力障害の程度だけではなく,痛みの拡がりについても評価し,対応していく必要が示唆された。