第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P23

Sun. May 29, 2016 10:00 AM - 11:00 AM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-23-4] 回復期リハビリテーション病棟における脳卒中患者の入院時心身機能が入院1カ月後の移乗動作自立の可否に与える影響

藤川純朗1, 齋藤圭介2, 山下哲也1, 高島秀人1, 浅井詠梨香1, 和泉早紀1, 槫谷拡士1, 山下潤1 (1.松井病院, 2.吉備国際大学保健医療福祉学部理学療法学科)

Keywords:脳卒中, 回復期, 移乗動作

【はじめに,目的】

回復期リハビリテーション(以下,リハ)病棟における治療では,入院時に予後予測に基づく適切なリハプログラムを作成し,集中的なリハを実施する事が重要である。脳卒中の予後予測には歩行能力に関するものが多く報告されているが,患者の高齢化や障害の重度化により,歩行自立に至らない場合も多い。そのため,歩行の獲得が困難な脳卒中患者では移動形態として車椅子が選択される場合も多く,生活範囲の拡大や介助量軽減のためにも,ベッドから車椅子への移乗動作の獲得が重要である。移乗動作を自立させる要因を明らかにすることは,入院初期からの見通しを立てたアプローチを可能にすると考える。

本研究の目的は,回復期リハ病棟入院時に移乗動作に介助を要する脳卒中患者を対象に,入院時に評価した項目と入院後1カ月間での移乗動作の自立可否との関連性を検討することである。


【方法】

対象は,平成27年3月から9月までに当院回復期リハ病棟に入院した初回発症の脳卒中患者のうち,入院時に移乗に監視・介助が必要であった24例(年齢81.0±6.7歳,男性12例・女性12例,脳梗塞17例・脳出血7例)とした。なお,検査内容が理解困難な重度の認知症を有する者,体幹・下肢の整形疾患や著明な関節可動域制限を有する者,障害老人の日常生活自立度判定基準においてランクCに該当する者は対象から除外した。

回復期リハ病棟入院時に,年齢,発症から回復期リハ開始までの移行期間,Brunnstrom Recovery Stage(BRS),Stroke Impairment Assessment Set(SIAS),Trunk Control Test(TCT),下肢荷重力比,座位前方リーチテスト(足底接地,足底非接地),Mini-Mental State Examination(MMSE)を測定した。回復期リハ病棟入院1カ月後にFunctional Independence Measure移乗項目のベッド・椅子・車椅子が6点以上の自立群と5点以下の介助群に分類した。自立群と介助群の2群間で二標本t検定,またはMann-Whitney検定を用いた比較検討を行った。統計解析ソフトはSPSS Statistics 22を用い,それぞれの検定において有意水準はすべて5%未満とした。


【結果】

対象者24例のうち,自立群は13例,介助群は11例であった。座位前方リーチテスト(足底接地),MMSEにおいて2群間で有意差がみられた(p<0.05)。


【結論】

今回の結果より回復期リハ病棟入院時に移乗に監視・介助が必要であった脳卒中患者が,入院1カ月後に移乗動作が自立するには,入院時の座位前方リーチテスト(足底接地)と認知機能が関連していることが示唆された。移乗は安定した座位姿勢から頭部・体幹を前方に傾け,支持基底面から頭部を前方に移動させる必要があり,座位前方リーチテスト(足底接地)はこれを反映していると考えられる。また,車椅子移乗を完全な自立とするには,ベッドへのアプローチやブレーキ・フットレストの操作など周辺動作も自立する必要があり,このことがMMSEと関連していると考えられる。