[P-NV-24-4] 歩行可能な脳卒中片麻痺者に対するBerg Balance Scaleの評価項目短縮の検討
Keywords:脳卒中, Berg Balance Scale, 簡略化
【はじめに,目的】
臨床場面における患者のバランス機能に対する評価において,比較的簡便に評価測定が可能であるBerg Balance Scale(BBS)がある。しかし,「全項目を実施するのに20分程度の時間を要する」という問題も指摘されている。先行研究では,高齢者や脳卒中患者に対してBBSの簡略化に関する報告が散見されるが,日本における脳卒中片麻痺者を対象とした報告はない。その為,脳卒中片麻痺者に対し,BBSの項目数を減らし簡略化したBBSを提案し,その信頼性・妥当性について明らかにする事を本研究の目的とした。
【方法】
対象は,発症から14日以上経過し,FIM移動項目が5点以上,著明な高次脳機能障害がない脳卒中患者(くも膜下出血は除外する)75名を対象とした。BBSの測定項目は,全14項目あり,日常的に杖や装具を使用している対象者は装着して行った。
BBSの測定結果をラッシュ分析で処理し,素点を間隔尺度のデータに変換して項目の困難度推定値,ラッシュモデルへの適合度を算出した。なお,ラッシュ分析は統計ソフトウェアWINSTEPを使用した。次に対象者におけるBBSの項目困難度,対象者の分布状況,ラッシュモデルに対するBBS項目の適合度の指標を参考にし,BBS全14項目から対象者に妥当な項目を抽出した。最後に精選して項目数を簡略化したBBS(簡略化BBS)と原法(14項目)の各合計点,内的整合性(クロンバックα)を比較した。合計点の相関としてSpearmanの順位相関係数を用いた。これらの統計処理にはSPSS Ver20を使用した。
【結果】
①BBSの各項目の難易度は,難しい順に14.片脚立位,13.継足立位,12.ステップ動作,11.360°回転,8.リーチ動作,7.閉脚立位,10.振り向き,9.拾い上げ,5.移乗,6.閉眼立位,4.腰掛け,2.立位保持,1.立ち上がり,3.座位保持,の順になった。なお6,4,2,1,3の5項目は,対象者の分布よりも低い難易度となった。
②適合度では,オーバーフィットとなった項目は,infit値,outfit値の両方で2.立位保持であった。アンダーフィットとなった項目は,outfit値のみで8.リーチ動作であった。
③項目の精選の結果は,9BBSとして“14.片脚立位,13.継足立位,12.ステップ動作,11.360°回転,8.リーチ動作,7.閉脚立位,10.振り向き,9.拾い上げ,5.移乗”となった。8BBSとしては“9BBSから,8.リーチ動作を除外とした項目”となり,7BBSとしては“8BBSから5.移乗,を除外とした項目”となった。
④信頼性と妥当性として,簡略化BBSの内的整合性(クロンバックのα係数)を検討した結果,α係数はそれぞれ,9BBSが0.876,8BBSが0.865,7BBSが0.857であった。また,BBS原法と各簡略化BBSとの間にそれぞれ有意な正の相関を認めた。
【結論】
7~9BBSのうちどの簡略化BBSが最も相応しい評価スケールに成り得るのか。ラッシュ分析を用いてBBSを簡略化した評価項目は,これらの結果を考慮すると,“8BBS”がもっとも適切な評価項目数ではないかと考えられた。
臨床場面における患者のバランス機能に対する評価において,比較的簡便に評価測定が可能であるBerg Balance Scale(BBS)がある。しかし,「全項目を実施するのに20分程度の時間を要する」という問題も指摘されている。先行研究では,高齢者や脳卒中患者に対してBBSの簡略化に関する報告が散見されるが,日本における脳卒中片麻痺者を対象とした報告はない。その為,脳卒中片麻痺者に対し,BBSの項目数を減らし簡略化したBBSを提案し,その信頼性・妥当性について明らかにする事を本研究の目的とした。
【方法】
対象は,発症から14日以上経過し,FIM移動項目が5点以上,著明な高次脳機能障害がない脳卒中患者(くも膜下出血は除外する)75名を対象とした。BBSの測定項目は,全14項目あり,日常的に杖や装具を使用している対象者は装着して行った。
BBSの測定結果をラッシュ分析で処理し,素点を間隔尺度のデータに変換して項目の困難度推定値,ラッシュモデルへの適合度を算出した。なお,ラッシュ分析は統計ソフトウェアWINSTEPを使用した。次に対象者におけるBBSの項目困難度,対象者の分布状況,ラッシュモデルに対するBBS項目の適合度の指標を参考にし,BBS全14項目から対象者に妥当な項目を抽出した。最後に精選して項目数を簡略化したBBS(簡略化BBS)と原法(14項目)の各合計点,内的整合性(クロンバックα)を比較した。合計点の相関としてSpearmanの順位相関係数を用いた。これらの統計処理にはSPSS Ver20を使用した。
【結果】
①BBSの各項目の難易度は,難しい順に14.片脚立位,13.継足立位,12.ステップ動作,11.360°回転,8.リーチ動作,7.閉脚立位,10.振り向き,9.拾い上げ,5.移乗,6.閉眼立位,4.腰掛け,2.立位保持,1.立ち上がり,3.座位保持,の順になった。なお6,4,2,1,3の5項目は,対象者の分布よりも低い難易度となった。
②適合度では,オーバーフィットとなった項目は,infit値,outfit値の両方で2.立位保持であった。アンダーフィットとなった項目は,outfit値のみで8.リーチ動作であった。
③項目の精選の結果は,9BBSとして“14.片脚立位,13.継足立位,12.ステップ動作,11.360°回転,8.リーチ動作,7.閉脚立位,10.振り向き,9.拾い上げ,5.移乗”となった。8BBSとしては“9BBSから,8.リーチ動作を除外とした項目”となり,7BBSとしては“8BBSから5.移乗,を除外とした項目”となった。
④信頼性と妥当性として,簡略化BBSの内的整合性(クロンバックのα係数)を検討した結果,α係数はそれぞれ,9BBSが0.876,8BBSが0.865,7BBSが0.857であった。また,BBS原法と各簡略化BBSとの間にそれぞれ有意な正の相関を認めた。
【結論】
7~9BBSのうちどの簡略化BBSが最も相応しい評価スケールに成り得るのか。ラッシュ分析を用いてBBSを簡略化した評価項目は,これらの結果を考慮すると,“8BBS”がもっとも適切な評価項目数ではないかと考えられた。