第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P25

2016年5月29日(日) 10:00 〜 11:00 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-25-5] 回復期脳卒中片麻痺患者の長下肢装具を使用した介助歩行における歩行補助用パワーアシストウェアの歩行因子への影響

植田達也1, 田口潤智1, 笹岡保典1, 堤万佐子1, 中谷知生1, 梶川健佑1, 池田智浩2 (1.尚和会宝塚リハビリテーション病院, 2.ダイヤ工業株式会社)

キーワード:脳卒中, 回復期, 歩行トレーニング

【はじめに,目的】

近年,脳卒中片麻痺患者の歩行トレーニングにおいて麻痺側股関節の屈曲動作を外力を用いて補助する歩行補助具が普及しつつある。今回我々は,ダイヤ工業株式会社製の歩行補助用パワーアシストウェア(以下PAW)を臨床場面で使用する機会を得た。これは空気圧を利用し収縮する人工筋を麻痺側下肢に装着し,スイングを補助する装置である。本研究の目的は回復期脳卒中片麻痺患者の歩行トレーニングにおいてPAWを使用した場合の歩行因子の変化を検証することである。

【方法】

対象は当院入院中の回復期脳卒中片麻痺患者12名とした。すべての者がGait Solution足継手付き長下肢装具を用いた歩行トレーニングを実施していた。後方介助歩行時の麻痺側下肢のスイングを徒手的に行った場合と,PAWで行った場合を比較した。人工筋は体幹部の専用ベスト前面から下腿部の軟性サポーターまで股関節,膝関節前面を走行するように装着した。PAWの人工筋は専用のバギーに搭載されたスイッチを押すことで,空気圧タンクからエアーが送られて収縮する。今回の検証では,歩行介助者と別にスイッチ操作者を設け,前遊脚期から遊脚終期まで人工筋が収縮するように操作した。介助者,スイッチ操作者による差を考慮し,介助は主担当セラピストが行い,スイッチ操作者は2名に限定した。計測は10mの歩行路において実施し,評価項目は10m歩行所要時間,歩数,川村義肢社製Gait Judge System(以下GJ)で計測された麻痺側立脚後期での足関節背屈角度,立脚初期での足関節底屈制動トルク値とした。GJで計測された数値は10m歩行中,歩行の安定している10歩行周期を選び,それぞれの平均値を算出した。統計学的処理はWilcoxonの符号付順位和検定を用い,有意水準は5%とした。

【結果】

PAWを用いた歩行時に10m歩行所要時間,歩数が有意に増大した。足関節背屈角度,底屈制動値トルク値は有意な変化を認めなかった。各歩行因子の平均値(徒手的介助/PAW)は所要時間が19.4秒/24.4秒,歩数が26.3歩/29.3歩,背屈角度が4.8°/4.6°,底屈制動トルク値が8.6Nm/8.4Nmであった。

【結論】

PAW使用時に10m歩行所要時間,歩数が有意に増大した要因として,介助者とは別にスイッチ操作者を設けたことが挙げられる。今回の検証では多くの症例において,介助者とスイッチ操作者間で人工筋によるアシストのタイミングを合わせることに難渋した。またすべての症例において一定の空気圧を用いたため,結果として最適な歩幅の調整とならなかったことも要因のひとつであると思われる。このことから,今後は空気圧の調整により最適な歩幅を調整した上で,介助者自身がスイッチを操作するという条件下での検証を行う必要があると考える