第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P26

2016年5月29日(日) 10:00 〜 11:00 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-26-1] 脳梗塞の病型分類に基づいたmodified Rankin Scaleの経時的変化

豊島晶1, 植村健吾1, 阿部久美1, 村上嘉奈子1, 廣瀬俊彦1, 叶世灯1, 青木敦志1, 姜治求1, 桑田彩加1, 永善俊充1, 平井沙織1, 山﨑知秀1, 山辺美帆1, 森下勝行2 (1.シミズ病院, 2.京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻)

キーワード:脳梗塞, modified Rankin Scale, 発症後90日

【はじめに,目的】

平成25年国民生活基礎調査(厚生労働省)によると,脳血管疾患(以下,CVA)は要介護原因の第1位であり,重度の後遺症による日常生活動作(以下,ADL)の制限が大きな問題とされている。なかでも,脳梗塞は梗塞巣の程度や損傷部位によって機能障害の特徴が異なりADLの予後に影響するため,急性期理学療法を施行する上では病型によるADLの経時的変化の理解が重要である。本研究では,脳梗塞病型によるADLの経時的変化をmodified Rankin Scale(以下,mRS)を用いて検討した。本研究の目的は,脳梗塞病型によるADLの経時的変化の特徴を明らかにし,急性期理学療法のプログラム立案の一助とすることである。


【方法】

対象は,2014年1月1日から2015年7月31日までに当院に入院したCVA患者1287名である。そのうち,脳梗塞病型分類に基づき心原性脳塞栓(A群)36名,アテローム血栓性梗塞(B群)75名,ラクナ梗塞(C群)54名の3群に分類した。対象の属性は,A群が平均年齢78.9±12.6歳,男性20名,女性16名,B群が平均年齢71.0±12.6歳,男性43名,女性32名,C群が平均年齢74.0±12.6歳,男性32名,女性22名であった。評価項目は,1.mRS,2.在院日数,3.転帰先とした。なお,mRSは,発症前,リハ開始時,退院時,発症後90日の結果を抽出し病型による経時的変化を検討した。転帰先は,自宅,リハ回復期病院(以下,リハ病院),療養型施設(以下,施設)の3つに分類し比較した。統計解析は,mRSと在院日数に二元配置分散分析を行い,事後検定にはBonferroni法を用いた。転帰先は,χ2検定を用いた。統計ソフトはJSTATを使用し,有意水準は5%とした。


【結果】

mRSと在院日数の二元配置分散分析の結果,群と時期に交互作用(p<0.05)を認めた。多重比較においてmRSは病前において3群間で有意差は認められなかった。リハ開始時と退院時は,A群がC群に比べ有意に高値を示した(p<0.01)。発症後90日は,A群がB群とC群に比べ有意に高値を示した(p<0.01)。A群とB群は,病前に比べ発症後90日まで有意にmRSが高値を示した(p<0.01)。B群は,リハ開始時に比べ退院時で有意にmRSが低値を示した(p<0.01)。C群は,病前に比べリハ開始時と退院時で有意に高値を示したが(p<0.05),発症後90日では有意差が認められなかった。在院日数は,A群とB群がC群に比べ有意に長かった(p<0.05)。転帰先は,A群で有意差を認めず,B群とC群は自宅復帰がリハ病院と施設への転院に比べ有意に多かった(p<0.05)。


【結論】

心原性脳塞栓は,アテローム血栓性梗塞とラクナ梗塞に比べ発症後90日の時点においてADLの重症度が高く,在院日数が長期化し,自宅復帰数が少ないことが示唆された。一方,ラクナ梗塞は退院時で病前のADLに回復し,さらに発症後90日においても維持していた。本研究の結果,脳梗塞病型による個別的な急性期理学療法を展開する必要性が示唆された。