[P-NV-26-2] 発症からの経時的変化から見た急性期脳卒中患者の転帰に関わる因子の検討
複数の脳卒中関連スケールの重要度の比較
キーワード:脳卒中関連スケール, 転帰, 一般化線形モデル
【はじめに,目的】
疾患特有の評価スケールは評価特性や使用時期から様々なスケールが存在している。以前,我々は急性期における複数の脳卒中関連スケールの経時的変化から,転帰先別の急性期傾向と特徴を後方視的に把握することを目的として比較検討した。それらの複数の脳卒中関連スケールの情報は患者状態を客観的に把握するだけに留まらず,治療計画や予後予測への有用な情報にもなり得ることが示唆された。しかし,急性期の患者の状態変化と脳卒中関連スケールとの関係を明確化した先行研究は少なく,さらに発症時期によるスケールの重要度の比較を行ったものは見受けられない。そこで,今回は急性期脳卒中患者の転帰による複数の脳卒中関連スケールでの状態変化の反映を,発症からの経時的変化の視点で検討することを目的とした。
【方法】
対象は2014年1月から2015年2月に横浜新都市脳神経外科病院SCUに入院し,理学療法を実施した急性期脳卒中患者905例中後述の除外対象を除いた576例とした。除外基準はくも膜下出血例,死亡例,状態悪化例,データ不備例とした。調査項目は,基本属性(性別,年齢,診断名,合併症),転帰先(自宅退院群,回復期群,転院群),脳卒中関連スケール(NIHSS,FIM,mRS:発症時・発症7日目・発症30日目)とした。
統計学的解析として,転帰先を従属変数,各スケールの得点を説明変数とした2項分布の一般化線形モデルを用いた。スケールを行った時期毎(発症時・発症7日目・発症30日目)に転帰先を①自宅退院群vs回復期群・転院群 ②回復期群vs転院群 として分析を行い,時期毎に有意差の高いスケールを抽出した(p<0.05)。統計処理にはIBM SPSS Statistics 20(日本アイ・ビー・エム株式会社)を使用した。
【結果】
自宅退院群vs回復期群・転院群は,発症時ではNIHSS(p<0.01)とmRS(p<0.01),7日目ではNIHSS(p<0.01)に有意差が見られ,30日目では有意差は見られなかった。また,回復期群vs転院群は,発症時ではNIHSS(p<0.05)とFIM(p<0.01),7日目と30日目ではFIM(p<0.01)に有意差が見られた。
【結論】
自宅退院群と回復期・転院群において関連性が高いスケールが算出されたが,測定時期により有意となるスケールが異なる結果となった。特にNIHSSは発症初期から7日目において有意であり,発症初期から転帰先を考慮していく上で有用なツールである可能性が示唆された。また回復期群と転院群を比較すると全時期においてFIMの有意性が高いことが見られた。転帰を予測する上で,自宅退院可能かの判断には全般的な病態が,回復期への転棟の判断には急性期からのADLが影響していると考えられるとともに,発症直後は複数スケールを見ることでより精度の高い予測が可能と思われる。今後それぞれの下位項目への着目や他項目との相互関係を明らかにすることで転帰予測の精度向上を目的としたさらなる検討を行っていく。
疾患特有の評価スケールは評価特性や使用時期から様々なスケールが存在している。以前,我々は急性期における複数の脳卒中関連スケールの経時的変化から,転帰先別の急性期傾向と特徴を後方視的に把握することを目的として比較検討した。それらの複数の脳卒中関連スケールの情報は患者状態を客観的に把握するだけに留まらず,治療計画や予後予測への有用な情報にもなり得ることが示唆された。しかし,急性期の患者の状態変化と脳卒中関連スケールとの関係を明確化した先行研究は少なく,さらに発症時期によるスケールの重要度の比較を行ったものは見受けられない。そこで,今回は急性期脳卒中患者の転帰による複数の脳卒中関連スケールでの状態変化の反映を,発症からの経時的変化の視点で検討することを目的とした。
【方法】
対象は2014年1月から2015年2月に横浜新都市脳神経外科病院SCUに入院し,理学療法を実施した急性期脳卒中患者905例中後述の除外対象を除いた576例とした。除外基準はくも膜下出血例,死亡例,状態悪化例,データ不備例とした。調査項目は,基本属性(性別,年齢,診断名,合併症),転帰先(自宅退院群,回復期群,転院群),脳卒中関連スケール(NIHSS,FIM,mRS:発症時・発症7日目・発症30日目)とした。
統計学的解析として,転帰先を従属変数,各スケールの得点を説明変数とした2項分布の一般化線形モデルを用いた。スケールを行った時期毎(発症時・発症7日目・発症30日目)に転帰先を①自宅退院群vs回復期群・転院群 ②回復期群vs転院群 として分析を行い,時期毎に有意差の高いスケールを抽出した(p<0.05)。統計処理にはIBM SPSS Statistics 20(日本アイ・ビー・エム株式会社)を使用した。
【結果】
自宅退院群vs回復期群・転院群は,発症時ではNIHSS(p<0.01)とmRS(p<0.01),7日目ではNIHSS(p<0.01)に有意差が見られ,30日目では有意差は見られなかった。また,回復期群vs転院群は,発症時ではNIHSS(p<0.05)とFIM(p<0.01),7日目と30日目ではFIM(p<0.01)に有意差が見られた。
【結論】
自宅退院群と回復期・転院群において関連性が高いスケールが算出されたが,測定時期により有意となるスケールが異なる結果となった。特にNIHSSは発症初期から7日目において有意であり,発症初期から転帰先を考慮していく上で有用なツールである可能性が示唆された。また回復期群と転院群を比較すると全時期においてFIMの有意性が高いことが見られた。転帰を予測する上で,自宅退院可能かの判断には全般的な病態が,回復期への転棟の判断には急性期からのADLが影響していると考えられるとともに,発症直後は複数スケールを見ることでより精度の高い予測が可能と思われる。今後それぞれの下位項目への着目や他項目との相互関係を明らかにすることで転帰予測の精度向上を目的としたさらなる検討を行っていく。