第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P26

2016年5月29日(日) 10:00 〜 11:00 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-26-5] 当院回復期リハビリテーション病棟脳卒中片麻痺患者の重回帰分析を用いた病棟歩行自立期間予測について

林真範, 濱本龍哉 (医療法人新さっぽろ脳神経外科病院)

キーワード:脳卒中, 歩行, 期間

【はじめに,目的】脳卒中片麻痺患者の歩行自立度予後予測については仁木の予後予測を始め,種々の報告がある。しかし,歩行自立期間についての予測に関する報告は少ない。当院では,急性期評価終了後,および回復期リハビリテーション病棟入棟評価後に将来的な歩行自立度と必要な期間について報告する体制になっており,その報告を元に介護保険の申請や退院準備を行う。必要な期間はスタッフの経験を元に提示することが多く,明確な根拠が無い状態である。本研究では回復期リハビリテーション病棟入棟時評価のデータを用い,歩行自立が予測される患者の病棟歩行自立までの期間について予測できないか検討を行った。

【方法】対象は2013年1月から2015年8月までに当院回復期リハビリ病棟に入棟した患者のうち,回復期リハビリ病棟入棟時に家屋内,屋内,屋内外いずれかの歩行自立が予測され,実際に自立した患者とし,本疾患以外の要因で長期化した患者,再発患者,小脳梗塞など運動失調が主体の患者は除外した。その結果,60名(男性47名,女性13名,脳梗塞43名,脳出血17名)が対象となった。解析は,年齢,発症から回復期リハビリ病棟入棟時までの日数(以下,入棟日数),上下肢12段階片麻痺グレード,運動FIM,認知FIM,日常生活機能指標を説明変数,入棟日から病棟歩行自立までの日数(以下,病棟歩行自立日数)を目的変数としたステップワイズ重回帰分析(変数増減法)を用い,病棟歩行自立日数の予測回帰式を求めた。統計処理はR2.8.1を用いた。

【結果】年齢:73.6±11.6歳,入棟日数:21.3±9.1日,上肢グレード:中央値10,下肢グレード:中央値9,運動FIM:62.6±12.8点,認知FIM:29.1±5.6点,日常生活機能指標:中央値5,病棟歩行自立日数:37.6±27.0日となった。ステップワイズ重回帰分析の結果,下肢グレード,運動FIMが採択され,病棟歩行自立日数=163.51+下肢グレード×(-6.052)+運動FIM×(-1.109)であった(自由度調整済み重相関係数の2乗=0.66,p<0.001)。

【結論】重回帰式を求めた結果,下肢グレード,運動FIMが採択された。自立が予測された時点で認知機能はある程度良好な場合が多く,自立までの期間については運動機能がより重要であることが示唆された。当院では10m歩行,TUGの測定もしているが,評価が困難な場合も多い。今後は歩行が困難でも有効となりうる評価指標を導入し,精度を高めていく必要がある。医療費は年々増加傾向にあり,今後はより短期間での歩行獲得と在院期間の短縮が求められる可能性がある。今回の予測式を当院における歩行自立の目安にするだけではなく,短縮するにはどうしたら良いかという視点でも利用する必要があると考える。