[P-NV-27-3] 立位時に恐怖心のある脳卒中患者の姿勢動揺と恐怖心に対する認知課題付加の影響
Keywords:脳卒中患者, 転倒恐怖心, 認知課題付加
【はじめに,目的】近年,姿勢制御と心理面の関係性が注目されており,特に転倒恐怖心を感じる状態ではstiffness strategyなど姿勢制御が変調することが数多く報告されている(Young, 2015)。脳卒中患者においても立位中に恐怖心を訴える者は多く,リハビリが円滑に進まないことが多い。このような対象者に対しては立位バランス練習を行う際に恐怖心を減弱させる方略を用いることにより,より有効に介入を行うことができる可能性がある。認知課題付加はdistracting effect(注意をそらす効果)が報告されており,恐怖心から注意をそらすことで立位中の恐怖心を減弱させる可能性がある。また,認知課題付加時は姿勢動揺が減少することも報告されており,恐怖心と姿勢動揺を同時に減少させる可能性がある。
本研究の目的は,立位時に恐怖心のある脳卒中患者の姿勢動揺や恐怖心に対する認知課題付加の影響を調べることである。
【方法】対象は当院入院中の脳卒中後片麻痺患者13名(67.4±10.0歳,男性8名,左片麻痺9名,発症後70.0±24.9日)とした。この13名は,開眼開脚立位時に転倒への恐怖心を“1;全くない~4;とてもこわい”までの4段階で答えてもらい評価した際に,2から4,つまり少しでも立位中に恐怖心を感じていた者を選択した。対象者の運動麻痺はSIASで股関節2.8±1.4,膝関節2.8±1.3,足関節1.9±1.8であり,Functional Ambulation Categoriesは2.3±1.0であった。
開眼開脚立位で,「普段通り立って下さい」と口頭指示したControl条件(C条件)と,認知課題(short term digit span memory task)を実施しながらのDual条件(D条件)の2条件を,20秒ずつ各2回実施し,その際のCOP(center of pressure)を重心動揺計(ANIMA社製キネトグラビコーダG-7100)で測定し,矩形面積,前後,左右方向の動揺速度,RMSを算出した。恐怖心は先述した4段階で各立位課題後に答えてもらい評価した。統計解析は,二条件間の恐怖心や各COP変数の差をWilcoxonの符号付順位検定で比較し,有意水準は5%とした。
【結果】D条件の恐怖心,矩形面積,左右方向の動揺速度とRMSはC条件と比較して有意に低い値を示した。D条件において恐怖心は13名中7名で軽減し,6名は不変であった。矩形面積は10名,左右方向の動揺速度は10名,RMSは9名で減少を認めた。D条件で各COP変数に増加を認めた4名はC条件時の値が小さい者であり,C条件時に高値の者はD条件で減少を示していた。
【結論】本研究の結果は,静止立位中の認知課題付加は立位時に恐怖心のある脳卒中患者の恐怖心や動揺範囲,左右方向の動揺速度,振幅を減少させる作用があることや,C条件時に姿勢動揺が大きい者は認知課題付加時に動揺が減少することを示している。よって,立位時に動揺が大きく恐怖心を感じている者に対して認知課題を付加することで,恐怖心や動揺が減弱した状態の立位制御が可能になることを初めて示した点が本研究の理学療法研究としての意義である。
本研究の目的は,立位時に恐怖心のある脳卒中患者の姿勢動揺や恐怖心に対する認知課題付加の影響を調べることである。
【方法】対象は当院入院中の脳卒中後片麻痺患者13名(67.4±10.0歳,男性8名,左片麻痺9名,発症後70.0±24.9日)とした。この13名は,開眼開脚立位時に転倒への恐怖心を“1;全くない~4;とてもこわい”までの4段階で答えてもらい評価した際に,2から4,つまり少しでも立位中に恐怖心を感じていた者を選択した。対象者の運動麻痺はSIASで股関節2.8±1.4,膝関節2.8±1.3,足関節1.9±1.8であり,Functional Ambulation Categoriesは2.3±1.0であった。
開眼開脚立位で,「普段通り立って下さい」と口頭指示したControl条件(C条件)と,認知課題(short term digit span memory task)を実施しながらのDual条件(D条件)の2条件を,20秒ずつ各2回実施し,その際のCOP(center of pressure)を重心動揺計(ANIMA社製キネトグラビコーダG-7100)で測定し,矩形面積,前後,左右方向の動揺速度,RMSを算出した。恐怖心は先述した4段階で各立位課題後に答えてもらい評価した。統計解析は,二条件間の恐怖心や各COP変数の差をWilcoxonの符号付順位検定で比較し,有意水準は5%とした。
【結果】D条件の恐怖心,矩形面積,左右方向の動揺速度とRMSはC条件と比較して有意に低い値を示した。D条件において恐怖心は13名中7名で軽減し,6名は不変であった。矩形面積は10名,左右方向の動揺速度は10名,RMSは9名で減少を認めた。D条件で各COP変数に増加を認めた4名はC条件時の値が小さい者であり,C条件時に高値の者はD条件で減少を示していた。
【結論】本研究の結果は,静止立位中の認知課題付加は立位時に恐怖心のある脳卒中患者の恐怖心や動揺範囲,左右方向の動揺速度,振幅を減少させる作用があることや,C条件時に姿勢動揺が大きい者は認知課題付加時に動揺が減少することを示している。よって,立位時に動揺が大きく恐怖心を感じている者に対して認知課題を付加することで,恐怖心や動揺が減弱した状態の立位制御が可能になることを初めて示した点が本研究の理学療法研究としての意義である。