[P-NV-28-1] 回復期脳卒中片麻痺者に対する機能的電気刺激を併用したステップ動作練習が歩行に与える影響
キーワード:脳卒中片麻痺者, 機能的電気刺激, ステップ動作練習
【はじめに,目的】
脳卒中片麻痺者の歩行補助具として機能的電気刺激装置(以下FES)を用いることがあるが,FESを内反尖足の治療目的として歩行練習に導入している報告は多く,一定の成果を挙げている。
Innovative Neurotronics社が開発したFESウォークエイド(以下WA)は歩行時の下腿の動きを内蔵された傾きセンサにて検知し,電気刺激を歩行周期に同期させることが可能で,その他使用法としてスイッチによる手動での通電(以下ハンドモード)も可能な事から,様々な動作練習に治療補助目的での導入が容易な機器である。
今回WAを脳卒中片麻痺者の歩行練習のひとつとして筆者が導入している麻痺側下肢のステップ動作練習に併用することで,実施後の歩行にどのような影響を及ぼすかを検証し,若干の知見を得たのでここに報告する。
【方法】
対象は当院回復期リハビリテーション病棟入院中の脳卒中片麻痺者で,杖・装具使用での監視歩行が可能な6名(年齢:63.5±4.3歳)とした。内訳は右片麻痺4名・左片麻痺2名で男性5名・女性1名,麻痺側下肢Brunnstrom.stageはIII:1名・IV:1名・V:4名であった。
今回試行したステップ動作は,被験者が平行棒を非麻痺側上肢で把持し,前方に設置したマークを注視した静的立位から開始した。麻痺側下肢を被験者各々の歩行時の麻痺側下肢振り出し幅に合わせて後方に引き(開始肢位),検者の口頭指示に合わせて麻痺側下肢を歩幅と同じだけ前方に振り出す動作を50回行った。前方への振り出し動作は,麻痺側股関節伸展0°まで重心が前方移動するまでとした。その際,検者は動作開始の口頭指示に合わせてWAのハンドモードにて通電開始し,踵接地まで通電した。実施は1日1回の6日間で,導入前後の10m歩行速度,Timed Up and Go Test(以下TUG),動作解析装置ToMoCo-VM(東総システム)にて計測した歩行時の下肢各関節の最大・最小可動域,x・y・z軸の3方向の床反力値を比較した。検定にはt検定を用いた。
【結果】
ステップ動作練習実施前後でTUGは21.1±13.9秒から19.9±13.6秒と有意に減少(p<0.01)し,非麻痺側下肢のy軸方向の床反力最小値が-45.7±25.3Nから-62.6±32.3Nへ有意に減少(p<0.05)した。
【結論】
歩行時の床反力の計測にて非麻痺側下肢のy軸方向の床反力値の減少,すなわち非麻痺側下肢の踵接地から荷重応答期にかけての反力の増加を示したが,この力源は麻痺側下肢立脚相での重心移動であるため,ウォークエイドの使用にて麻痺側足関節の背屈を促したことで,麻痺側下肢立脚相でのロッカーファンクション機能が改善し,重心移動時のエネルギー損失が減少したと考えられる。
TUGの時間短縮も認めていることより,今回の試用が歩行効率の改善ならびに安定性の向上に寄与したと思われる。
脳卒中片麻痺者の歩行補助具として機能的電気刺激装置(以下FES)を用いることがあるが,FESを内反尖足の治療目的として歩行練習に導入している報告は多く,一定の成果を挙げている。
Innovative Neurotronics社が開発したFESウォークエイド(以下WA)は歩行時の下腿の動きを内蔵された傾きセンサにて検知し,電気刺激を歩行周期に同期させることが可能で,その他使用法としてスイッチによる手動での通電(以下ハンドモード)も可能な事から,様々な動作練習に治療補助目的での導入が容易な機器である。
今回WAを脳卒中片麻痺者の歩行練習のひとつとして筆者が導入している麻痺側下肢のステップ動作練習に併用することで,実施後の歩行にどのような影響を及ぼすかを検証し,若干の知見を得たのでここに報告する。
【方法】
対象は当院回復期リハビリテーション病棟入院中の脳卒中片麻痺者で,杖・装具使用での監視歩行が可能な6名(年齢:63.5±4.3歳)とした。内訳は右片麻痺4名・左片麻痺2名で男性5名・女性1名,麻痺側下肢Brunnstrom.stageはIII:1名・IV:1名・V:4名であった。
今回試行したステップ動作は,被験者が平行棒を非麻痺側上肢で把持し,前方に設置したマークを注視した静的立位から開始した。麻痺側下肢を被験者各々の歩行時の麻痺側下肢振り出し幅に合わせて後方に引き(開始肢位),検者の口頭指示に合わせて麻痺側下肢を歩幅と同じだけ前方に振り出す動作を50回行った。前方への振り出し動作は,麻痺側股関節伸展0°まで重心が前方移動するまでとした。その際,検者は動作開始の口頭指示に合わせてWAのハンドモードにて通電開始し,踵接地まで通電した。実施は1日1回の6日間で,導入前後の10m歩行速度,Timed Up and Go Test(以下TUG),動作解析装置ToMoCo-VM(東総システム)にて計測した歩行時の下肢各関節の最大・最小可動域,x・y・z軸の3方向の床反力値を比較した。検定にはt検定を用いた。
【結果】
ステップ動作練習実施前後でTUGは21.1±13.9秒から19.9±13.6秒と有意に減少(p<0.01)し,非麻痺側下肢のy軸方向の床反力最小値が-45.7±25.3Nから-62.6±32.3Nへ有意に減少(p<0.05)した。
【結論】
歩行時の床反力の計測にて非麻痺側下肢のy軸方向の床反力値の減少,すなわち非麻痺側下肢の踵接地から荷重応答期にかけての反力の増加を示したが,この力源は麻痺側下肢立脚相での重心移動であるため,ウォークエイドの使用にて麻痺側足関節の背屈を促したことで,麻痺側下肢立脚相でのロッカーファンクション機能が改善し,重心移動時のエネルギー損失が減少したと考えられる。
TUGの時間短縮も認めていることより,今回の試用が歩行効率の改善ならびに安定性の向上に寄与したと思われる。