第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P28

Sun. May 29, 2016 11:10 AM - 12:10 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-28-4] 脳卒中片麻痺患者の肩に対するセルフトレーニングの長期的効果

長田悠路, 本島直之, 井田星斗, 久野誠 (農協共済中伊豆リハビリテーションセンター)

Keywords:片麻痺患者, 上肢, セルフトレーニング

【目的】当院の片麻痺患者は麻痺側の肩の痛みを訴える患者が多く,その痛みを取るためのセルフトレーニングを指導することも多い。林らは脳卒中患者の肩のセルフトレーニングとして,ローラーを用いた両上肢の運動(ローラー運動)を発案し,筆者らはその即時効果についての報告を行った。今回はローラー運動の長期的効果を検証することが本研究の目的である。


【方法】対象は,当院回復期病棟入院中の片麻痺患者10名(平均年齢68.8±6.63歳,平均発症期間93.1±34.4日,上肢BRS:Brunnstrom Recovery Stage.2が3人,3が0人,4が2人,5が5人)である。選定基準は一側性の運動麻痺があるもの,肩関節の整形学的疾患の既往がないないこと,椅子座位がとれる者とした。計測課題は,椅子座位で麻痺側上肢を3回挙上するものとし,介入前,2週間の介入後,2周間の介入なし後について,三次元動作解析装置(VICON NEXUS)にて計測した。介入は,ローラー運動をPT後に毎日20回行うものとし,PTやOTには研究に関する情報を与えなかった。ローラー運動の注意点として,手を前方で組み両手掌部をできるだけ離さずに行うこと,前方へ転がしたときに頭部をできるだけ腕の間に前屈して入れ込むようにすることを指示した。反射マーカーを上半身21箇所に貼付し,上部体幹に対する上腕の角度(肩関節角度),骨盤に対する上部体幹角度(体幹角度),骨盤の絶対空間角度を抽出した。肩関節の痛みの変化をNumerical Rating Scale(以下NRS)にて評価した。なお,全ての評価指標は最大挙上時の値とし,各3回の平均値を抽出した。介入期間の変化量(介入後-介入前),介入なし期間の変化量(介入なし後-介入後)をウィルコクソンの符号順位検定にて比較した(有意水準5%)。


【結果】肩の痛みを呈していた患者は7人存在し,介入前はNRSで平均4.3±3.8の痛みであったものが,変化量として介入期間では平均-2.2±2.2に減少し,介入なし期間では1.2±1.9に増大し変化量に有意な差があった(p<0.05)。その他,有意な差が見られた項目はなかった。


【結論】運動学的データに有意な差は見られなかったものの,介入期間では肩の痛みが有意に改善し,介入がなくなると僅かに痛みが再発するもしくは,痛みがなかった患者でも発症期間の経過とともに痛みが再発することが分かった。痛みが改善しているにもかかわらず,上肢挙上時の肩関節角度に有意な差が見られなかったことに関しては,BRS2の患者が挙上時に肩関節屈曲ではなく伸展方向により動くようになったことや,自然回復により介入なし期に上肢の屈曲が出始めたことによるデータのばらつきがあったことが挙げられる。今後は症例数を増やしBRS別に効果の検証をする必要があるが,痛みの改善という点から考えるとBRS2以上であればローラー運動は有効であることが示唆された。