第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P29

2016年5月29日(日) 11:10 〜 12:10 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-29-5] 軽症にも関わらずリハビリテーション病院から自宅退院できなかった症例群の検討

三谷祐史1, 細江浩典1, 安井敬三2, 林優子1, 小坂香織1, 古野泰大1, 犬塚加菜1, 河合潤也1 (1.名古屋第二赤十字病院, 2.名古屋第二赤十字病院)

キーワード:脳卒中連携パス, 転帰, 自宅復帰

【はじめに】リハビリテーション(以下リハ)病院入院時のFIMにおいて軽症群の自宅退院率が高いことは言われているが,軽症にも関わらずリハ病院から自宅退院できなかった症例について検討した報告は渉猟したがなかった。

【目的】当院の脳卒中地域連携パス(以下連携パス)を調査し,軽症にも関わらずリハ病院から自宅退院できなかった要因について検討すること。

【対象及び方法】対象は2011年4月から2015年3月に当院から,連携パスを用いてリハ転院し,リハ病院から連携パスを回収でき,かつ記載不備のなかった1189名のうち,リハ病院入院時FIM91以上の399例とした。それをFIM別に91-100(以下91群)101-110(以下101群),111-120(以下111群),121-126(以下121群)の4層に分け,さらにリハ病院からの転帰で自宅退院群(以下退院群)と非退院群に分け,それぞれの特徴を回収された連携パスを基に調査した。調査項目は,年齢,当院ならびにリハ病院の在院日数,リハ病院退院時FIM(以下退院時FIM),FIM利得,FIM効率とした。検定には分散分析を行い,多重比較にはTukey法を用いた。有意水準は5%未満とした。

【結果】退院群/非退院群は343/56例で,それぞれ91群95/24,101群100/22,111群107/6,121群41/4であった。各項目の平均値は,91群,101群,111群,121群の順に,年齢(歳)が72.0/67.6,73.4/63.9,64.4/67.7,60.8/62.0。当院在院日数(日)が28.2/27.7,27.4/32.6,25.4/24.3,25.7/29.3。リハ病院在院日数(日)が64.8/67.9,52.9/62.4,48.9/55.8,38.3/61。退院時FIM(点)が110.2/107.6,116.2/113.9,121.3/119.5,123.6/124.5。FIM利得(点)が154/12.3,10.5/8.6,6.1/4.2,0.2/2.3。FIM効率(点)が0.27/0.19,0.22/0.19,0.14/0.11,0.03/0.04であった。同じ層内での退院群-非退院群間には全ての項目で有意差は見られなかった。退院群内では,当院在院日数に有意差は見られなかったが,91群121群間でそれ以外の全項目で有意差が見られ,91群111群間では年齢,当院在院日数以外の項目に有意差が見られた。その他,各群間で有意差が散見された。

【考察】軽症患者の機能的転帰や予後については,概ねリハ病院入院FIMに準ずることが示唆された。軽症でも非自宅退院となった具体理由を見てみると,再発及び他院での治療を要する他疾患合併によるバリアンス例が全群で13例あった。それ以外では,91群,101群において,入院期間が60日上限の施設へと転出され,60日後に転院となった例が半数近くを占めていた。これらの症例は運動失調や失語症が残存する例,若年で職業復帰を目指す症例などが散見された。その他では,同居者なしや生保にて施設入所となった例,精神症状により転院となった例などが見られたが大きな傾向はつかめなかった。

【結論】同程度のFIMであっても,合併症や症状,家庭環境などによって治療が長期化する傾向が見られ,転院先を考慮する必要があると考えられた。