第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本呼吸理学療法学会 一般演題ポスター
呼吸P01

2016年5月27日(金) 11:50 〜 12:50 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-RS-01-1] 救急ICUでリハビリテーションを施行した外傷患者の退院時QOLとADLの関連

川田稔1, 川田恵1, 花田真嘉1, 浜野泰三郎1, 寺山雅人1, 下雅意崇亨1, 梶原祐輔1, 森脇つかさ1, 綾井清香1, 継田晃平1, 泊健太1, 田村暢一朗2, 福岡敏雄3 (1.倉敷中央病院リハビリテーション部, 2.倉敷中央病院救急科, 3.倉敷中央病院総合診療科救命救急センター)

キーワード:QOL, 多発外傷, ADL

【はじめに,目的】

集中治療を必要とする重症疾患患者は,救急医療の発展とともに短期生命予後の改善を認めるようになった。ICUで治療する患者は,その過程の中でICU-AWやせん妄,認知機能障害を生じ,短期生命予後の不良だけでなく長期に渡りADLやQOLを低下させる。このため救命できる患者が増加するに従い,集中治療後の長期生命予後やQOLの検討が必要である。多発外傷患者では,救命後から3/4は復職できるが改善には1年以上かかることが多く,受傷5年後でも2割が就労不能で8割がADLに制限があり,ICUからの生存患者は,長期的に認知機能や身体機能を悪化させQOLの低下を生じることがわかっている。本邦でICUから急性期リハを対象とした外傷患者のQOLとADLの関連の報告はほぼない。そこで本研究では,ICUでリハを施行した外傷患者のQOLとADLの関連を検討することを目的とした。

【方法】

対象は2013年10月から2015年4月の間に外傷で当院のEICUへ入院した62例である。内訳は,男性46例,女性16例,平均年齢61.5歳(最低18歳~最高96歳)である。除外基準は,聴取困難な意識障害残存症例・死亡例とした。QOLを測定するためにSF-36v2を用いて測定した。この尺度は,36項目からなり,8つの下位尺度と3つのコンポーネント・サマリースコアで構成されている。身体機能(PF),日常役割機能(身体)(RP),体の痛み(BP),全体的健康感(GH),活力(VT),社会生活機能(SF),日常役割機能(精神)(RE),心の健康(MH)で評価され,さらに身体的健康度(PCS),精神的健康度(MCS),役割/社会的健康度(RCS)の3因子からなる質問紙である。得点は,国民標準値から性別と年齢を調整した偏差得点を使用し,標準値を50点として0~100点からなる。退院時もしくは転院時に記載説明を行い回答後回収した。ADLの評価として退院時のFIMを使用し運動項目,認知項目,合計得点を使用した。データは,中央値(四分位範囲)で示し,相関係数を検討した。解析はIBM SPSS 20を使用し統計危険率5%を有意水準とした。

【結果】

SF-36v2の測定日は27日(中央値)であった。外傷の重症度(ISS)は21点,交通外傷が最も多かった。QOLは,各項目で低下しており,特にPF,RPについては,10点台と著明に低下していた。QOLとADLの相関関係は,PFとFIM(認知),GHとFIM(認知),VTとFIM(運動/認知/合計),SFとFIM(運動/認知/合計),PCSとFIM(運動/認知/合計)REとFIM(認知),MHとFIM(認知),RCSとFIM(認知)で認めた(p<0.01)。

【結論】

QOLとADLは密接に関連し,外傷患者では身体機能の低下から活動が制限されQOLの低下をきたすことが多い。QOLの改善には,身体機能の向上だけでは不十分であり,多職種による認知面へのフォローや社会資源の利用方法の提供など多方面にわたるアプローチが必要である。