第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本呼吸理学療法学会 一般演題ポスター
呼吸P01

2016年5月27日(金) 11:50 〜 12:50 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-RS-01-2] 当院ICUにおける理学療法介入と死亡転機をとる症例の臨床的特徴

柳田頼英1, 大曲正樹1, 山本敦也1, 高塚俊行1, 岩本純一1, 町口輝1, 前村優子1, 湯浅圭史1, 有薗信一2 (1.総合病院聖隷三方原病院リハビリテーション部, 2.聖隷クリストファー大学リハビリテーション学部理学療法学科)

キーワード:ICU, 理学療法, 転帰

【はじめに,目的】

日本では2025年問題へ向けた病院の再編が進み,超急性期病院はその機能をより特化されることとなる。当院は2014年実績;年間救急車受け入れ数5086台,年間ドクターヘリ稼働数605機の第3次救急病院であり,2015年度より私設病院で初めて高度救急救命センターに認定,より急性期に特化した医療を提供していくこととなる。

当院では発症当日,ICU在室中より理学療法(以下,PT)介入を行うことも少なくないが,一方で全身状態不良のために治療の甲斐なく死亡という転帰をたどる症例も存在する。急性期リハの施行時はリスク管理が重要視されるが,決して引き起こしてはならない有害事象は患者死亡である。しかし実際に死亡の転帰をたどる症例の詳細に関しては報告がなく,その実際は不明である。本研究の目的は,急性期病院ICUにおける死亡退院症例の詳細を検討することである。


【方法】

1)対象

平成24月4月1日~平成25年3月31日の高度救命救急センターICU全入室患者672例中,死亡退院となった84例の中でカルテの目的外利用に同意を得た79例。

2)方法

対象者の年齢,性別,身体組成,主科,入院方法,入院病名,入院前生活形態,PT処方の有無,PT介入目的,入院時Barthel Index(以下,BI),死亡理由,入院期間をカルテより収集し,検討を行った。


【結果】

対象79例は男性44例・女性35例,平均年齢は77.9±13.6歳。主科は救急科61例・脳神経外科18例・脳卒中科4例で,67例(84.8%)が救急搬送,入院前生活形態は自宅54例・他病院からの転院2例・施設23例であった。入院期間の中央値は2日(0日-129日)。入院病名は肺炎が18例(22.8%)と最も多く,次いで蘇生後脳症16例(20.3%),脳出血9例(11.4%),くも膜下出血・老衰4例ずつ(5.0%),脳梗塞3例(3.8%)と続き,その他が17種25例(31.7%)となった。

死亡退院79例中PT処方は34例(43.0%),入院1.0±1.9日目に出されていた。平成24年度のICU入室患者総数672例中,PT処方が出たのは312例であり,PT介入症例の10.9%が死亡退院の転帰をとっていた。PT目的は,人工呼吸器等での呼吸管理・ケアが12例(15.2%),機能改善・廃用予防が67例(84.8%)。PT介入群の入院時BIは中央値0(0-60)点であり,PT介入は死亡退院1.4±1.4日前まで行った。PT介入群は非介入群と比較して有意に入院日数が長く(19.6±28.2日vs.2.2±3.4日,p<0.001),入院病名と死亡原因が異なる割合が高かった(35.3%vs.6.7%,p<0.001)。一方,その他の因子に有意な差は認められなかった。


【結論】

当院ICUにおけるPT介入は46.4%であるが,このうち10%程度が死亡退院の転帰をたどった。死亡症例のうちPT介入群は,非介入群と比較して入院期間が延長し,入院時とは異なる疾患で死亡する割合が高いことから,PTは主科から選択的に処方されていることや,初期治療に成功した後の病態管理を慎重に行っていく必要があることが示唆される結果となった。