第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本呼吸理学療法学会 一般演題ポスター
呼吸P02

2016年5月27日(金) 11:50 〜 12:50 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-RS-02-2] デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者の最大強制吸気量および最大呼気流速と姿勢の検討

山崎忍, 小金澤敦, 深町秀彦, 黒岩靖 (長野県厚生農業協同組合連合会鹿教湯三才山リハビリテーションセンター三才山病院)

キーワード:デュシェンヌ型筋ジストロフィー, MIC, CPF

【はじめに,目的】左大腿骨顆上骨折を発症し骨折治療のため左膝関節伸展位にてギプス固定となった非侵襲的陽圧換気療法(以下NPPV)管理下の,20歳代男性のデュシェンヌ型筋ジストロフィー症例を担当した。骨折治療のため約6週間のベッド上安静となった。発症6週間後にギプスを外したが,下肢の痛みや骨癒合が不完全であったため軟性膝装具を左下肢に使用した。骨折発症前はベッド上ギャッチアップ座位では下肢が屈曲し胡座に近い座位を取っており,車いす座位は下腿を下垂した姿勢を取っていた。しかし,ギプスや軟性膝装具での左膝関節伸展位固定時は,ギャッチアップ座位や車いす座位では長座位に近い座位を取らざるを得ず,この状況下では以前感じていなかった排痰困難や呼吸困難感の増加を訴えた。この経過を通じ,最大強制吸気量(以下MIC)と最大呼気流速(以下CPF)を指標にして,効率の良い排痰と安楽な姿勢を比較・検討した。

【方法】呼吸機能の評価はMICを簡易流量計で測定,CPFはピークフローメーターで測定した。MIC,CPFの測定時,上部胸郭に徒手で呼気介助を行った。姿勢は①両下肢伸展位での背臥位②下肢伸展位でのギャッチアップ座位③車いす座位でレッグレストを水平位まで挙上した姿勢④車いす座位でレッグレストを下垂した姿勢⑤車いす座位でバックレストをわずかにリクライニングさせ寄りかかった状態でレッグレストを水平位まで挙上した姿勢⑥車いす座位でバックレストをわずかにリクライニングさせ寄りかかった状態でレッグレストを下垂した姿勢の6種類で測定した。

【結果】①の背臥位ではMICは1650ml,CPFは250L/分,②のギャッチアップ座位ではMICは1530ml,CPFは250L/分であった。車いす座位では⑥のバックレストをわずかにリクライニングさせ寄りかかった状態でレッグレストを下垂した姿勢が最も良好な値を示しMICは1750ml,CPFは290L/分であり,息苦しさも軽減した。値が最も低かったのは③の車いす座位でレッグレストを水平位まで挙上した姿勢でMICは1400ml,CPFは250L/分で息苦しさの訴えも強かった。

【結論】下肢を伸展位固定された状態でギャッチアップ座位や車いす座位を取ることで長座位に近い状態になり,腹部が圧迫され,MIC,CPFの低下や呼吸困難感の増加を招いたと考えた。座位保持時は下肢を屈曲した胡座位や,車いすおよび端座位では下腿を下垂し体幹を後方に傾け,腹部の圧迫を取り除いた姿勢を取ることが呼吸困難感の軽減やMIC,CPFの向上につながり,排痰を効率よく行なえる姿勢である事が示唆された。また,呼吸機能の低下している患者に不要な関節固定や姿勢を強いることで,呼吸機能の更なる低下を引き起こすので注意が必要である。