第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本呼吸理学療法学会 一般演題ポスター
呼吸P02

Fri. May 27, 2016 11:50 AM - 12:50 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-RS-02-3] 高炭酸ガス血症を示した進行性筋ジストロフィー症患者に対し,IPV施行後一時的に改善が得られた一症例

小金澤敦, 深町秀彦, 山﨑忍, 吉田雅俊, 黒岩靖 (鹿教湯三才山リハビリテーションセンター三才山病院)

Keywords:肺内パーカッションベンチレーター, 動脈血炭酸ガス分圧, 進行性筋ジストロフィー症

【はじめに,目的】

肺内パーカッションベンチレーター(以下IPV)は,呼吸機能の改善(酸素化・ガス交換機能の向上),排痰促進,肺炎や無気肺の予防等の効果があり,これらについて数多く報告されてきている。今回,24時間人工呼吸器管理(以下TPPV)されたII型呼吸不全を呈する進行性筋ジストロフィー症患者に対し,動脈血炭酸ガス分圧をモニタリングしながらIPVを施行する機会を得た。IPVの効果とPCO2のモニタリングの結果について考察を加え報告する。

【方法】

症例は進行性筋ジストロフィー症の40歳代,女性。平成23年4月に当院の指定療養介護事業所に入所となった。意識清明。コミュニケーションも良好。動脈血炭酸ガス分圧を測定するために使用した機器は,TOSCA500(経皮PCO2/SpO2モニタリングシステムラジオメータ バーゼル社製 販売元IMI株式会社)。耳介にセンサを取り付け測定した。平成24年のTOSCAの測定結果は,PCO2:40mmHgであった。平成27年にはPCO2:66mmHgまで上昇しており,人工呼吸器の設定や機種を変更してきたが改善を得ることはできなかった。TOSCAにより連続的にPCO2を測定しながらIPVを施行した。

【結果】

IPV施行直前のTOSCAの測定結果はPR:128回/分,SpO2:98%,PCO2:66mmHgであった。IPVの設定は,25psi,パーカッション頻度114回/分で施行した。PCO2の値は施行から5分経過時に55mmHg,7分経過時に43mmHg,10分経過時37mmHgと低下がみられた。PRは施行後128回/分から118回/分と低下がみられた。10分経過した時点で体の痺れの訴えあり,過換気であると考えられたため中止した。施行後10~15分でPCO2の値は元に戻ってしまった。IPV施行前には呼吸困難感を訴えることがみられていたが,IPV施行中や施行後に呼吸困難感を訴えることはなかった。後日,同じ設定でIPVを施行したところ同様の結果が得られた。今までは1日1回のみIPVを施行していたが,今後はIPVの施行頻度を増やすことでPCO2のベースラインが改善するのか検討中である。

【結論】

本症例は病期の進行に伴い人工呼吸器では十分なガス交換が行えておらずPCO2のベースラインが高くなっていたと考えられる。今回,IPVを施行することでPCO2の値が低下し,肺胞でのガス交換が行えている事が確認された。II型呼吸不全を呈し,高炭酸ガス血症に陥った症例のPCO2を改善させる目的でIPVは一時的に有効な手段と考えられた。また,人工呼吸器を使用しながらのIPVの施行も検討しており,効果の持続に向けては今後の方策の検討が必要である。