第51回日本理学療法学術大会

Presentation information

一般演題ポスター

日本呼吸理学療法学会 一般演題ポスター
呼吸P03

Fri. May 27, 2016 3:20 PM - 4:20 PM 第10会場 (産業振興センター 2階 セミナールームB)

[P-RS-03-1] 上肢支持による前傾座位が運動後の呼吸循環応答に与える影響

宮本直美, 笹本安寿治, 村中令, 山下誠, 田平一行 (畿央大学健康科学部理学療法学科)

Keywords:呼吸循環応答, 上肢支持, 前傾座位

【はじめに,目的】

呼吸リハビリテーションマニュアルでは,動作時の呼吸困難に対して,ファーラ―位や前傾座位,上肢支持による体幹保持などの安楽姿勢をとることを推奨している。しかし,この姿勢による効果に関してはエビデンスレベルもまだ低い現状にあり,一定の見解が得られていない。また,運動後に安楽姿勢となり,呼吸循環応答を詳細に検討している報告も少ない。そこで,本研究は,運動後の上肢支持による前傾座位の効果を明らかにすることを目的に,健常成人を対象として,運動後の上肢支持による前傾座位が呼吸循環応答に及ぼす影響を検討した。


【方法】

対象は,呼吸器,循環器,整形外科的疾患がない健常成人男性12名(年齢21.6±1.1歳,身長173.6±4.7cm,体重64.7±7.3kg)とした。

方法は,対象者に運動負荷量を決定する目的でトレッドミルによる心肺運動負荷試験(CPX)を実施した。CPXの負荷量は3km/hから開始し,1分毎に1km/hずつ増加する漸増負荷試験で,10分以降は速度12km/hで一定とし,傾斜のみ2%/分ずつ増加した。このCPXから得られたpeakVO2の80%の負荷で10分間のトレッドミルによる定常負荷を実施し,運動後に直立座位(上肢支持なし)と上肢支持による前傾座位の2つの姿勢に分けて,最大10分まで測定を行った。2つの姿勢の順序はランダムとした。測定項目は,呼気ガス分析装置(MINATO AE-310S)を用いて,分時酸素摂取量(VO2),分時二酸化炭素排出量(VCO2),分時換気量(VE),1回換気量(VT),呼吸数(RR),酸素摂取率(%VO2/VE)を求めた。心拍数(HR)は心電図計を用いて測定し,運動前後および運動終了から10分までの呼吸困難感と下肢疲労感を修正Borg scaleを用いて評価した。また,運動後のHR回復に関与する因子の検討として,自律神経機能をPolar RS800cxにて測定し,副交感神経(HF)と交感神経(LF/HF)を測定した。解析方法は,2つの姿勢による各指標を対応のあるt検定およびWilcoxonの符号付順位検定にて解析し,有意水準は5%未満とした。


【結果】

運動後の2つの姿勢で有意差があった項目は,%VO2/VE(運動後30秒,1分),HR(運動後~10分)のみであった。自律神経機能に関しては,直立座位姿勢よりも上肢支持による前傾座位姿勢において,副交感神経の活動が運動後に上昇傾向であることを認めた。


【結論】

運動後の上肢支持による前傾座位では,換気量に対しての酸素摂取量が高く,換気効率が良いことと,HRの回復速度が速かったことから,運動後の呼吸循環応答は速やかになることが示唆された。これらは,前傾による横隔膜筋長の最適化や上肢支持による体幹筋の筋緊張低下などによる効果であることが推察された。