第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本呼吸理学療法学会 一般演題ポスター
呼吸P03

Fri. May 27, 2016 3:20 PM - 4:20 PM 第10会場 (産業振興センター 2階 セミナールームB)

[P-RS-03-3] 反射的咳嗽の筋活動量および筋活動時間の生理学的特徴

随意的咳嗽との比較

玉村悠介1, 黒岩美樹1, 松浦道子1, 吉川創1, 勝田有梨1, 新田勉1, 糸田昌隆2, 錦見俊雄2 (1.社会医療法人若弘会わかくさ竜間リハビリテーション病院療法部, 2.社会医療法人若弘会わかくさ竜間リハビリテーション病院診療部)

Keywords:咳嗽, 反射, 筋活動

【はじめに,目的】

咳嗽は気道内に侵入した異物を除去する生体防御反応の一つであり,誤嚥性肺炎予防において重要である。これまでにも姿勢と咳嗽力の関係についての報告や咳嗽時の筋活動を測定した報告も見受けられるが,随意的咳嗽力を測定したものが多く,反射的咳嗽についての報告は少ない。本研究では,随意的咳嗽と反射的咳嗽の筋活動について計測し,その関係性を検討した。

【方法】

対象は呼吸器疾患の既往のない健常者10名(平均年齢21.8±0.9歳)。咳嗽力の測定は,咳反射テストを用いた「反射的咳嗽力」,自身の最速の早さで咳嗽を行う「最速咳嗽力」,自身の最大限の力で咳嗽を行う「最大咳嗽力」の3種類とした。咳反射テストは超音波ネブライザーにて1%クエン酸生理食塩水を吸入させ,吸入後1回目の咳反射を反射的咳嗽力とした。筋活動の計測は,表面筋電図を使用し,外腹斜筋,内腹斜筋の筋活動を測定し,咳嗽開始から終了までの筋活動量および筋活動時間を測定した。統計処理はSPSSversion12を使用し,外腹斜筋,内腹斜筋の各咳嗽時の筋活動,筋活動時間について一元配置分散分析にて比較・検討した。

【結果】

外腹斜筋の筋活動量は,反射的咳嗽時で36.45±12.75μV,最速咳嗽時で25.06±10.82μV,最大咳嗽時で50.18±16.61μVであり,最大咳嗽時が反射的・最速咳嗽時に比べ有意に大きかった(p<0.05)。筋活動時間は,反射的咳嗽時で0.39±0.13sec,最速咳嗽時で0.43±0.15sec,最大咳嗽時で0.73±0.3secであり,最大咳嗽時が反射的・最速咳嗽時に比べ有意に長かった(p<0.05)。内腹斜筋の筋活動量は,反射的咳嗽時で63.4±41.56μV,最速咳嗽時で58.2±53.19μV,最大咳嗽時で99.49±75.91μVであり,最大咳嗽時と最速咳嗽時のみ有意な差を認めた(p<0.05)。筋活動時間は,反射的咳嗽時で0.39±0.15sec,最速咳嗽時で0.48±0.19sec,最大咳嗽時で0.76±0.32secであり,最大咳嗽時が最速咳嗽時,反射的咳嗽時に比べ有意に長かった(p<0.05)。

【結論】

本研究から反射的咳嗽は,最大咳嗽に比べて外腹斜筋,内腹斜筋の筋活動量は小さく,筋活動時間も短い特徴を有する咳嗽であり,最速咳嗽に近い咳嗽であることが明らかになった。この理由として,咳嗽力は吸気量の影響を受けるといわれているが,反射的咳嗽は気道内に侵入した異物を受容器が感知した際に突然生じる反応であり,十分な吸気が行えていないことが一因と考えられた。そのため,最大咳嗽時に比べ胸郭拡張を制限させ,筋長の変化が少ない状態での筋発揮となることで効率的な筋発揮が困難となり,筋活動量が低下したと考えられた。今回は対象が健常者で,筋活動のみの計測であったが,今後は最大呼気流量との関連など多面的な検討に加え,呼吸器疾患や嚥下障害を有する患者での検討,呼吸リハビリテーション前後の評価・検討が必要であると考える。