[P-RS-04-1] 食道癌切除術施行前後の患者における横隔膜脚部肥厚値と呼吸機能の変化について
Keywords:食道癌, 横隔膜脚部断肥厚値, 呼吸機能
【はじめに,目的】
食道癌切除術施行後の患者の呼吸機能については,%VCやFVC,呼吸筋力が低下すると報告されている。
CTにて食道癌切除術施行前後の第3腰椎レベルの総筋肉量と大腰筋肉量を測定した結果,術後に筋肉量の減少が認められたと報告されている。また,CT上での横隔膜脚部断面積とVCに有意な相関があると報告されている。
これらのことより,術後VC低下の要因は横隔膜の筋肉量の減少や,筋力低下が生じるためではないかと疑問を抱いた。
本研究では,食道癌切除術施行前後の患者における横隔膜脚部肥厚値と呼吸機能の変化について検討したので報告する。
【方法】
対象者は,食道癌切除術施行前後に呼吸機能検査が可能であった8名(男性6名,女性2名),平均年齢63.9±10.8歳とした。術式は腹臥位胸腔鏡下食道切除術6名,左開胸開腹連続斜切開術1名,開胸術1名であった。
検討項目は,術前後の左右横隔膜脚部肥厚値,呼吸機能検査(%VC,FEV1%,FVC)とした。
横隔膜脚部肥厚値は吸気時のCTを用いて,正中弓状靱帯レベルで肥厚値が最大となるスライスとその前後2スライス分の肥厚値を平均した値とした。呼吸機能検査はSpiro Sift SP-350 COPDを用いて測定した。横隔膜脚部肥厚値の測定日は術前と術後3日目とした。呼吸機能検査の測定日は術前と退院時(平均20.5±13.7日)とした。
統計学的解析は,術前後の左右横隔膜脚部肥厚値,呼吸機能検査(%VC,FEV1%,FVC)の平均値を各々Wilcoxon検定を用いて有意水準は5%未満で検定した。
【結果】
横隔膜脚部肥厚値は右:術前8.2±1.5mm,術後6.3±1.4 mm,変化率は-23.2±11.6%,左:術前5.6±1.1mm,術後3.9±0.8 mm,変化率は-28.1±21.2%であった。
%VCは術前105.1±18.3%,術後75.6±13.0%,変化率は-26.9±14.5%であった。
FEV1%は術前80.4±16.2%,術後78.2±8.5%,変化率は0.2±22.1%であった。
FVCは術前3.6±1.2L,術後2.5±0.8L,変化率は-28.4±10.2%であった。
各項目の術前後の比較では,術後に左右横隔膜脚部肥厚値,%VC,FVCで有意な低下が認められた。
【結論】
先行研究より,FVCと呼吸筋力に相関関係があると報告されている。本研究において,FVCの低下が認められたことから,呼吸筋力が低下していると推察する。また,本研究において,術後に左右横隔膜脚部肥厚値の低下が認められたことから,横隔膜の筋肉量もしくは,収縮力が減少したことにより%VC,FVCが低下したと推察する。
術直後の呼吸機能検査は患者負担が大きく,実施は困難である。しかし,呼吸機能と自己排痰能力の関係が報告されており,術後肺合併症の予防のためには術後の呼吸機能の把握が重要である。本研究より,CT上での横隔膜脚部肥厚値を用いることで患者負担を軽減させ,簡便に術後の呼吸機能を予測できる可能性があると推察する。
食道癌切除術施行後の患者の呼吸機能については,%VCやFVC,呼吸筋力が低下すると報告されている。
CTにて食道癌切除術施行前後の第3腰椎レベルの総筋肉量と大腰筋肉量を測定した結果,術後に筋肉量の減少が認められたと報告されている。また,CT上での横隔膜脚部断面積とVCに有意な相関があると報告されている。
これらのことより,術後VC低下の要因は横隔膜の筋肉量の減少や,筋力低下が生じるためではないかと疑問を抱いた。
本研究では,食道癌切除術施行前後の患者における横隔膜脚部肥厚値と呼吸機能の変化について検討したので報告する。
【方法】
対象者は,食道癌切除術施行前後に呼吸機能検査が可能であった8名(男性6名,女性2名),平均年齢63.9±10.8歳とした。術式は腹臥位胸腔鏡下食道切除術6名,左開胸開腹連続斜切開術1名,開胸術1名であった。
検討項目は,術前後の左右横隔膜脚部肥厚値,呼吸機能検査(%VC,FEV1%,FVC)とした。
横隔膜脚部肥厚値は吸気時のCTを用いて,正中弓状靱帯レベルで肥厚値が最大となるスライスとその前後2スライス分の肥厚値を平均した値とした。呼吸機能検査はSpiro Sift SP-350 COPDを用いて測定した。横隔膜脚部肥厚値の測定日は術前と術後3日目とした。呼吸機能検査の測定日は術前と退院時(平均20.5±13.7日)とした。
統計学的解析は,術前後の左右横隔膜脚部肥厚値,呼吸機能検査(%VC,FEV1%,FVC)の平均値を各々Wilcoxon検定を用いて有意水準は5%未満で検定した。
【結果】
横隔膜脚部肥厚値は右:術前8.2±1.5mm,術後6.3±1.4 mm,変化率は-23.2±11.6%,左:術前5.6±1.1mm,術後3.9±0.8 mm,変化率は-28.1±21.2%であった。
%VCは術前105.1±18.3%,術後75.6±13.0%,変化率は-26.9±14.5%であった。
FEV1%は術前80.4±16.2%,術後78.2±8.5%,変化率は0.2±22.1%であった。
FVCは術前3.6±1.2L,術後2.5±0.8L,変化率は-28.4±10.2%であった。
各項目の術前後の比較では,術後に左右横隔膜脚部肥厚値,%VC,FVCで有意な低下が認められた。
【結論】
先行研究より,FVCと呼吸筋力に相関関係があると報告されている。本研究において,FVCの低下が認められたことから,呼吸筋力が低下していると推察する。また,本研究において,術後に左右横隔膜脚部肥厚値の低下が認められたことから,横隔膜の筋肉量もしくは,収縮力が減少したことにより%VC,FVCが低下したと推察する。
術直後の呼吸機能検査は患者負担が大きく,実施は困難である。しかし,呼吸機能と自己排痰能力の関係が報告されており,術後肺合併症の予防のためには術後の呼吸機能の把握が重要である。本研究より,CT上での横隔膜脚部肥厚値を用いることで患者負担を軽減させ,簡便に術後の呼吸機能を予測できる可能性があると推察する。