第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本呼吸理学療法学会 一般演題ポスター
呼吸P04

2016年5月27日(金) 15:20 〜 16:20 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-RS-04-3] 長期人工呼吸器管理患者に対する離床の効果

穴井優一, 定永史子, 岩北晃代, 高野直哉, 村井直仁 (医療法人財団聖十字会西日本病院)

キーワード:長期人工呼吸器管理, 離床, weening

【はじめに,目的】長期に及ぶ人工呼吸器管理患者において,離脱に難渋する症例を経験した。人工呼吸器からの離脱は全体の約30%程度で,2ヶ月以上の期間を過ぎてからの離脱成功は3%程度とされる。今回,これらの症例に対し,離床を中心とした理学療法を行い,呼吸機能にどのような影響を与えるか検証した。

【方法】対象は2013年~2015年度,8週以上人工呼吸器管理下にある患者6名(男2,女4),平均年齢79.2±10.6歳,挿管から理学療法開始までの平均日数89.1±22.4日,疾患名は敗血症2名,消化管出血1例,RDS1例,筋ジストロフィー1例,脳出血1例とした。全例に開始直後より座位・立位を中心とした運動療法を約2時間/日実施した。評価項目は当院で測定可能な,JCS,Barthel index(以下BI),PEEP(呼気終末陽圧),VT(1回換気量),PIP(最大吸気圧),RR(呼吸数),FiO2(吸入酸素濃度),自発呼吸数の8項目とした。各項目を介入日から3ヶ月間,4週毎に対応のあるt検定で比較した。統計解析にはStatcel3を用い,有意水準は5%とした。

【結果】JCS:0週186.6,4週70.0(p<0.05),PEEP:0週8.83cmH2O,8週4.16 cmH2O(p<0.05),VT:383.2ml,8週419.1ml(p<0.05),12週434.0ml(p<0.01),PIP:0週37.0cmH2O,8週60.9 cmH2O(p<0.05),12週70.0 cmH2O(p<0.01),FiO2:0週40.0%,8週29.3%(p<0.05),12週23.8%(p<0.01),自発呼吸数:0週0.1回/分,8週7.1回/分(p<0.05),BI:0週5.0点,12週6.6点,RR:0週19.1回/分,12週:14.3回/分,BI,RRに有意差はなかった。なお,介入期間中にリハビリ中止となる対象者はいなかった。

【結論】理学療法介入日にSpontaneous Breathing Trialを実施し,全例離脱は困難であった。人工呼吸器からの離脱には意識レベルの改善やVTの増加が重要であり,これらに着目し,座位・立位での運動療法を実施した。座位・立位姿勢は脳幹網様体を賦活させ,意識の改善に寄与すると報告がある。本研究でも同様,全例に意識レベルの改善を認め,これに伴い自発呼吸も発生した。更に座位・立位姿勢により,肺容量を増大させ,横隔膜活動に刺激を与える事で酸素化にも大きく影響したと考える。介入により対象者6名中,3名がTピース管理,1名が離脱成功,8週~12週以上の介入期間を要す結果であった。本研究より,回復期・維持期においても座位・立位での運動療法を実施する事で,呼吸機能を改善させ,weeningの一助となる可能性が示唆された。