第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本呼吸理学療法学会 一般演題ポスター
呼吸P07

Sat. May 28, 2016 2:50 PM - 3:50 PM 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-RS-07-5] 非侵襲的陽圧換気下での早期歩行が開胸術後の肺酸素化能改善につながった一症例

永井佑典, 古田宏, 河村知範, 藤原博道, 當尊哲也, 廣畑博之 (岸和田徳州会病院)

Keywords:早期離床, 呼吸不全, 周術期

【はじめに,目的】

近年,人工呼吸器装着下であっても歩行を含む離床を早期から行うことが呼吸機能の改善やウィーニングの促進等に効果的であるとされている。今回,開胸術後の呼吸不全により非侵襲的陽圧換気(以下NPPV)が装着された患者に対し,従来の報告よりも高濃度のFIo2であったが,NPPV装着下での歩行を行うことで,肺酸素化能の改善とNPPVからの離脱を促進させた症例を経験したので報告する。

【方法】

(症例)67歳,男性。身長180cm,術前体重111.7kg,BMI34.5。労作時の胸痛,息切れを主訴に当院受診され,労作性狭心症と診断される。手術目的に入院となり,On-pump beating CABG施行された。主な既往は高血圧,糖尿病,腎不全。術前肺機能検査は正常範囲であった。ADLは自立。術翌日抜管に至るが酸素化不良となり,ハイホーネブライザーにて酸素濃度98%,酸素流量35Lで投与。低酸素血症認めるため抜管3時間後にNPPV装着となる。理学療法は同日より呼吸理学療法と端座位練習より開始したが酸素化の改善を得ることはできなかった。術後2日目,胸部X線にて両下側肺障害を認めた。酸素化改善なくNPPVを継続。設定はFIo2 1.0,IPAP 18,EPAP 8で,Pao2 70台,P/F比は70であった。高度肥満等により有効な体位排痰法は困難な状態。循環動態は安定していたため,ベッドサイドでの立位,足踏みまで実施した。術後3日目,酸素化はやや改善を認めたがP/F比100と不良。NPPV装着下(FIo2 0.7,IPAP 18,EPAP 8)でベッドサイドでの足踏みを施行し,Spo2 92%程度維持されていたため,NPPV装着下で40m程度の歩行を実施した。

【結果】

歩行前後でのバイタルサインに大きな変化はなく,歩行時のSpo2も92%と低下しなかった。また,息切れや呼吸苦の訴えも認めなかった。歩行後,呼吸音の改善とSpo2の上昇を認め,Pao2 123,P/F比175へと改善した。その後,酸素化は徐々に改善し,術後4日目より日中NPPV離脱。術後5日目にNPPV完全離脱。その後も経過良好であり,術後12日目に退院となった。

【結論】

術後の両下側背障害により肺酸素化能の低下をきたしNPPV装着となった症例。人工呼吸器装着下での歩行を行う際の基準に統一された見解はまだないが,FIo2<0.6とされているものが多い。本症例はこれまでの報告よりも高濃度の酸素濃度であったが,他に肺酸素化能を改善させる有効な手段がなく,離床を進めることにより改善が期待されたため,十分な評価の上で歩行を行い,肺酸素化能の改善を得た。歩行により,換気量の増大,無気肺の改善につながったと思われる。これによりNPPV離脱を促進することが出来たと考えられた。また,有害事象を起こす事なく,安全に歩行を行う事が可能であった。このような症例に対しても,離床による効果とリスクを十分に評価し,適切に離床を行う事が重要であると考える。