[P-RS-08-1] 肺がん患者の健康関連QOLと身体能力の術後回復過程
肺葉切除術後患者に対する前向き研究
Keywords:健康関連QOL, 身体能力, 回復過程
【はじめに,目的】
肺葉切除術を受けた肺がん患者の健康関連QOLの回復程度は,近年,明らかになりつつあるが,健康関連QOLと身体能力を絡めた縦断的検証は少ない。そこで本研究の目的は,胸腔鏡下肺葉切除術(以下,VATS)で肺葉切除を施行された症例の術後3カ月間における身体能力,健康関連QOLの縦断的変化を明らかにすることとした。
【方法】
本研究デザインは前向き研究とした。研究参加者は,2013年6月から2015年10月の間に呼吸器外科でVATSが施行され,術後3ヵ月間の縦断調査が可能であり,かつ研究の同意が得られた36名(男性22名,平均年齢73.2±6.7歳)であった。測定項目は,呼吸機能,筋力評価として握力,体重比膝伸展筋力,歩行能力評価としてTimed up and go test(以下,TUG),運動耐容能評価として6分間歩行距離(以下,6MWD),心肺運動負荷テスト,健康関連QOLとしてShort-form 36 items health survey(以下,SF-36)であった。調査は術前,術後1ヵ月後,術後3ヵ月後とした。周術期リハビリテーションは,術前オリエンテーションから介入し,術後1病日目より早期離床を行い,運動療法を実施した。統計学的解析は,各測定項目の変化は反復測定分散分析を行い,post-hoc検定にはBonferrorni法を用いた。また,研究参加者を術前の6MWDが450m以上歩ける群と歩けない群,Peak VO2が15 mL/kg/min以上群と未満群,予測比Peak VO2が75%以上群と未満群に割り付け,SF-36の変化を2群と調査期間の分割プロットデザインによる共分散分析を行い,post-hoc検定にはBonferrorni法を用いた。なお,共変量は術前の各測定項目の値とした。統計解析にはSPSS ver.19を使用し,有意水準は5%とした。
【結果】
反復測定共分散分析の結果,術後1ヵ月後に有意に低下したのは,呼吸機能,握力,SF-36 Physical component summary(以下,PCS),SF-36 Role/Social component summary(以下,RCS)であった。術後1ヵ月後から術後3ヵ月後にかけて,体重比膝伸展筋力,6MWD,SF-36 PCS,SF-36 RCSは有意に改善したが,呼吸機能とSF-36 PCSの術後3ヵ月後は術前よりも有意に低下していた。TUG,Peak VO2,SF-36 MCSは各時点において有意差を認めなかった。また,各群におけるSF-36の変化では,運動耐容能の低い群が術後優位に低下していた。
【結論】
本研究は,術前から術後3ヵ月にかけて肺葉切除術後患者の健康関連QOLおよび身体能力を前向きに検証した。結果,肺がん患者の身体能力は術後1カ月足らずで回復することが確認できたが,健康関連QOLは術前の状況まで回復するのに3ヵ月以上を要することが明らかとなった。中でも術前から運動耐容能が低値の症例は,術後の健康関連QOL低下が顕著であった。これらのことから,身体能力を維持・向上させるだけでは健康関連QOL対策としては不十分であることが示唆された。
肺葉切除術を受けた肺がん患者の健康関連QOLの回復程度は,近年,明らかになりつつあるが,健康関連QOLと身体能力を絡めた縦断的検証は少ない。そこで本研究の目的は,胸腔鏡下肺葉切除術(以下,VATS)で肺葉切除を施行された症例の術後3カ月間における身体能力,健康関連QOLの縦断的変化を明らかにすることとした。
【方法】
本研究デザインは前向き研究とした。研究参加者は,2013年6月から2015年10月の間に呼吸器外科でVATSが施行され,術後3ヵ月間の縦断調査が可能であり,かつ研究の同意が得られた36名(男性22名,平均年齢73.2±6.7歳)であった。測定項目は,呼吸機能,筋力評価として握力,体重比膝伸展筋力,歩行能力評価としてTimed up and go test(以下,TUG),運動耐容能評価として6分間歩行距離(以下,6MWD),心肺運動負荷テスト,健康関連QOLとしてShort-form 36 items health survey(以下,SF-36)であった。調査は術前,術後1ヵ月後,術後3ヵ月後とした。周術期リハビリテーションは,術前オリエンテーションから介入し,術後1病日目より早期離床を行い,運動療法を実施した。統計学的解析は,各測定項目の変化は反復測定分散分析を行い,post-hoc検定にはBonferrorni法を用いた。また,研究参加者を術前の6MWDが450m以上歩ける群と歩けない群,Peak VO2が15 mL/kg/min以上群と未満群,予測比Peak VO2が75%以上群と未満群に割り付け,SF-36の変化を2群と調査期間の分割プロットデザインによる共分散分析を行い,post-hoc検定にはBonferrorni法を用いた。なお,共変量は術前の各測定項目の値とした。統計解析にはSPSS ver.19を使用し,有意水準は5%とした。
【結果】
反復測定共分散分析の結果,術後1ヵ月後に有意に低下したのは,呼吸機能,握力,SF-36 Physical component summary(以下,PCS),SF-36 Role/Social component summary(以下,RCS)であった。術後1ヵ月後から術後3ヵ月後にかけて,体重比膝伸展筋力,6MWD,SF-36 PCS,SF-36 RCSは有意に改善したが,呼吸機能とSF-36 PCSの術後3ヵ月後は術前よりも有意に低下していた。TUG,Peak VO2,SF-36 MCSは各時点において有意差を認めなかった。また,各群におけるSF-36の変化では,運動耐容能の低い群が術後優位に低下していた。
【結論】
本研究は,術前から術後3ヵ月にかけて肺葉切除術後患者の健康関連QOLおよび身体能力を前向きに検証した。結果,肺がん患者の身体能力は術後1カ月足らずで回復することが確認できたが,健康関連QOLは術前の状況まで回復するのに3ヵ月以上を要することが明らかとなった。中でも術前から運動耐容能が低値の症例は,術後の健康関連QOL低下が顕著であった。これらのことから,身体能力を維持・向上させるだけでは健康関連QOL対策としては不十分であることが示唆された。